『ばけばけ』スピンオフが映し出した“もうひとつの人生” サワとウメが補完したトキの物語
続く「オウメサン、オカミ、シマス。」で描かれたのは、松江新報で「ヘブン先生日録」が大盛り上がりしていた頃のお話。タイトルから分かるとおり、あのおウメさんが花田旅館の女将になるのだという。
ウメは変わり映えのしない日常の中で、何か面白いことが起きないかと期待していた。そんなある日、女将のツル(池谷のぶえ)がギックリ腰によって身動きが取れなくなる事態に。そこでウメが一日女将として奮闘していくことになるのである。
こちらのエピソードでは、本編には登場しなかったキャラクターが登場。紬(山谷花純)と誠(葉山奨之)のふたりだ。彼女らはどうにもワケありな様子で、紬が涙を流していたことなどから、ウメとツルは「駆け落ち」や「心中」を疑う。早合点にもほどがある。実際にはふたりは夫婦であり、紬が思い詰めている原因は嫁姑問題。松江新報の記者・梶谷(岩崎う大)も加わることで、愉快な“ミスリード”が展開したのだ。
ウメが真の女将の器となる日はまだ遠いのだろうが、彼女の愛情とアイデアが込められた「おにぎり」が、紬と誠の仲を取り持つこととなった。そして多くの視聴者が、ウメのこれからを想像したのではないだろうか。演じる野内のくるくると変わる表情に、とても魅せられたものだった。
繰り返すように、『ばけばけ』が描いてきたのはトキの人生だ。けれども彼女の物語は、そして『ばけばけ』の世界は、こうしていくつもの生き生きとした人生があってこそ、成立したものなのだ。円井わんと野内まるは本作を序盤から支えてきた存在で、若き演技者の好演が、トキの日常に豊かさをもたらしていた。いま改めてそう気づかされる。ドラマが終わっても、彼女たちの人生は視聴者の心の中で進み続けるのだ。
■配信情報
連続テレビ小説『ばけばけ』スピンオフ
NHKオンデマンド、NHK ONEにて配信中
『オサワ、スイーツチョン。』
出演:円井わん、濱正悟、柄本時生、野内まる、河井青葉、重岡漠、吉田庸、吉沢亮ほか
作:大池容子
脚本監修:ふじきみつ彦
『オウメサン、オカミ、シマス。』
出演:野内まる、岩崎う大、葉山奨之、山谷花純、髙石あかり、トミー・バストウ、池谷のぶえほか
作:大池容子
脚本監修:ふじきみつ彦
写真提供=NHK