NetflixのWBC独占中継は何をもたらす? 野球ファンだからこそ嬉しい点と心配な点
3月5日、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕した。前回優勝を果たした日本は連覇に挑む。すでに来日した大谷翔平フィーバーが巻き起こっており、ファンの期待度は高い。開幕戦のオーストラリア対台湾では、台湾のファンが東京ドームに詰めかけて超満員になっており、世界的な関心も高まっている。
前回大会ともっとも大きく異なるのは、地上波テレビでの中継が一切なく、全試合をNetflixが独占中継することだ。
背景には放映権料の高騰がある。これまで30億円程度だったが、今回は150億円と5倍になったとも言われている。それだけNetflixがWBCに強い関心があったということだ。Netflixが国内のスポーツイベントをライブ配信するのは初めて。なお、Netflixが独占中継するのは日本独自の動きである。
当然ながらNetflixは全力でWBCを盛り上げている。事前に配信されたドキュメンタリー『DIAMOND TRUTH ワールドベースボールクラシックの真実』では、阪神タイガースの熱狂的ファンである渡辺謙と読売ジャイアンツの原辰徳元監督のファンで野球をテーマにした『弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(日本テレビ系)という出演作もある二宮和也を起用。海外取材も行った上で、過去の大会で繰り広げられた名場面の裏側を掘り下げている。B’zの稲葉浩志がアニメ『タッチ』の主題歌をカバーした大会応援ソング「タッチ」も大きな話題を呼んだ。
基本的にはオーソドックスな試合中継が行われるが、映像面でも新しい試みも取り入れられている。立体映像技術の「ボリュメトリックビデオ」では、試合が動いた瞬間を通常のカメラアングルではとらえることができない場所からも映像を再現する。ホームベース周辺に設置したダート・カメラではバッターのスイングを足元から映し出す。インドアドローンでは、球場全体を上空からとらえてスケール感を演出する。
野球ファンにとって嬉しいのは、全20カ国の全47試合がライブ配信されることで、いつでも好きなときに視聴することができるようになったことだ。これまでの地上波中継では侍ジャパンの試合が中心だったため、世界中の試合を見たい野球マニア、あるいは日本在住の各国のファンを喜ばせる仕様になっている。
なぜNetflixがここまで力を入れるのか。日本でのNetflixは加入世帯が1000万世帯を超え、定額動画配信サービスの国内市場シェアで首位を快走している。その一方、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や『イカゲーム』などのNetflixオリジナルのコンテンツが圧倒的な人気を得ている海外とは異なり、日本では『鬼滅の刃』などのアニメをはじめ、日本独自のコンテンツが人気を博しているという指摘がある(※)。
日本では「Netflixでしか観られない」という特性が活かされていないため、前回大会の中継が視聴率40%を超えるなど日本で絶大な人気を誇るWBCというコンテンツを「Netflixでしか観られない」独占中継することに踏み切ったのだと考えられる。