宇野維正の映画興行分析

「『嵐が丘』ランク外」が突きつける2026年の実写洋画興行のリアル

 2月最終週から3月第1週にかけての週末動員ランキングは、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』(東宝)が、オープニング3日間で動員62万1000人、興収7億8000万円をあげて初登場1位。1980年にシリーズがスタートして以来、コロナ禍による公開延期もちょうど1年延ばすなどこれまで頑なに3月公開を死守してきた映画『ドラえもん』シリーズだったが、今年の公開日はたった2日とはいえ2月に食い込む2月27日。春休み興行がひと段落する4月前半で落ち着きがちだった映画『ドラえもん』シリーズの興行において、これは興行寿命を延ばす策とも考えられるが、昨年公開の前作『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』のオープニング3日間との興行比で111%と、とりあえず現時点でその試みは成功したと言えるだろう。

 他に注目すべきは、9位に初登場したHIKARI監督、ブレンダン・フレイザー主演の米日合作の『レンタル・ファミリー』。順位こそ下位ではあるものの、オープニング3日間の動員6万9000人、興収9200万円とディズニー配給のサーチライト作品としては健闘している。作品の評判もいいので、年配層の観客をつかむことができれば、外国との合作、現代の日本が舞台、日本人俳優もメインキャストで出演という点で類似性のある2023年公開の『PERFECT DAYS』(最終興収13.3億)のような息の長い興行になるかもしれない。

 個人的に衝撃だったのは、その『レンタル・ファミリー』と同日に公開されたマーゴット・ロビー製作・主演、エメラルド・フェネル監督の新作『嵐が丘』がランク外となったことだ。マーゴット・ロビー製作・主演作品としては、2023年の世界興収1位作品となった『バービー』も国外での興行と日本での興行の大きなギャップが話題となったが、今回のギャップはそれをもはるかに超えている。『バービー』も『嵐が丘』も国外でのメインの客層は若年層の一般的な女性客。日本ではその層がごっそり抜け落ちていて、熱心な外国映画好きが劇場に足を運んでいる状況だ。

 『バービー』と同じく英米では現象を巻き起こしたエメラルド・フェネルの前作『Saltburn』が日本では配信オンリーでの公開となったこと、過去の『嵐が丘』映像化作品をよく知る年配層に宣伝がリーチしなかったこと、などなど理由はいくつも考えられるが、もっと根本的な“無理ゲー”感が漂う2026年の実写洋画興行のリアルを突きつけられたかたちだ。

■公開情報
『嵐が丘』
全国公開中
出演:マーゴット・ロビー、ジェイコブ・エロルディ、ホン・チャウ、オーウェン・クーパー
原作:エミリー・ブロンテ
監督・脚本:エメラルド・フェネル
製作:マーゴット・ロビー
音楽:チャーリー・XCX
配給:東和ピクチャーズ・東宝
原題:Wuthering Height
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