『ばけばけ』吉沢亮の魅力が凝縮された錦織回 “秘密の会話”が愛おしい

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第83話は、実は大きな転機を迎えつつある錦織(吉沢亮)のさまざまな顔が垣間見えた回となった。

 松江中学と同じ敷地内にある松江小学校を視察に訪れた錦織は、そこでサワ(円井わん)の授業を目にする。授業後、「勝手ながら授業を見させてもらった」と錦織から声をかけられたサワは突然のことに恐縮するが、続けて、錦織は「熱の籠もったいい教え方をしていた。前にも一度見させてもらったことがあるが見違えるようだった」と感想を伝え、教員試験に向けて頑張るサワを励ました。

 このところ、「これまで1人で頑張ってきたのだから、これからも1人で頑張って課題を乗り越えるべき」と自分で自分を律して頑張ろうとしてきたサワ。その姿を庄田(濱正悟)が見てくれていて、「わしの力を利用するくらいの気持ちで」と手を貸してくれ、サワ自身もだんだんと変化を実感してきた姿を錦織は、こうして率直に評価してくれる。こんなに心強いことはないだろう。「頑張りますけん」と言ったサワの表情は嬉しそうでもあり、再び決意に燃えていた。

 そんな人を励ませる錦織も悩みを抱え、背中を押してくれる最後の一言を欲していた。錦織にとってこういうときに欲しい言葉をくれるのがヘブン(トミー・バストウ)だ。ヘブン宅を訪れた錦織は、「生徒たちのためにも、そしてヘブンさんがここに居続けるためにも、お受けしてみようかと」と校長になる決意を告げた。ヘブンも「ワタシ……サンセイ、オモイマス」ともちろん同意する。

 でも錦織が本当に気になっていたことは、ヘブンのリテラリーアシスタントが続けられるかどうか。地位のある役職につくのに、自分のやりたいことが続けられるかを気にする錦織の姿は少し子どもっぽい印象を受けるかもしれないが、ヘブンと会話し、彼の身の回りのことにまで気にかけることが錦織の「何よりもしたいこと」なのである。ヘブンは、こちらを窺うようにして不安そうな錦織の顔に微笑みながら「ニシコオリサン イナイコマル アリマス」と答えた。それを聞いて、安心したように一息ついた錦織は、やっと本当の意味で肩の荷をおろしたようだった。

 サワのように弱気になっているときや錦織のように力不足を感じたり、何か後ろめたいことがあったりするときは1人でなんとかしなければならないと考えがち。だが、今回のサワにとっての錦織、そして錦織にとってのヘブンのように、優しく見守ってくれる存在やその人がくれる素直な優しい一言が胸のつかえをあたたかく溶かしてくれることがある。

 ヘブンにとってのそんな“大切な存在”がトキである。トキは勉強中の英語で簡単な挨拶をしながら錦織のもとへやってくる。その楽しそうな様子に錦織も思わず笑顔になり、「君が落ち込んでいるとヘブンさんまで沈んでしまう」「君はこの家の太陽なんだから輝いていてくれよ」と英語で返した。

 もちろんこの会話は錦織とヘブンにしか分からない“秘密の会話”。きっと錦織が何よりも楽しく、大切にしたいのがこの瞬間なのだろう。トキに鋭いツッコミを入れる“錦織らしさ”もいつの間にか戻ってきていた。

 トキとサワの間にある一言では形容できない思いが、錦織と庄田の間にもある。わかりあうのには時間がかかるが、トキとサワの関係性が変化しようとしている今、錦織と庄田にも“雪解け”がくることを祈っている。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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