『ばけばけ』“庄田”濱正悟דサワ”円井わんの恋が始まる? 朝ドラ“名サブカップル”の歴史
『なつぞら』(2019年度前期)の夕見子(福地桃子)と雪次郎(山田裕貴)のカップルも印象的だった。雪次郎は菓子職人として修業を重ねる中で、何度も自信をなくし、迷いながらも前へ進んできた人物だ。一方の夕見子は、甘い言葉に簡単に乗らず、相手をきちんと見極めるタイプである。だからこそ、ふたりの距離が縮まる瞬間には重みが出る。雪次郎が仕事で成果を出し、その上で気持ちを言葉にしていく流れは、恋が頑張ってきた時間と結びつくかたちになっていた。勢いだけの告白ではなく、積み重ねてきたものが背中を押す告白だから、視聴者も納得して見届けられるのである。さらにこの恋が朝ドラらしいのは、ふたりだけで完結しない点だ。仲間や家族が見守り、祝福し、背中を押していく。恋が周囲の人間関係ともつながりながら前へ進むからこそ、夕見子と雪次郎は心地よく残ったのである。
上川周作が『虎に翼』で生む“イイ味” 『まんぷく』を経て体現する直道の“在り方”
伊藤沙莉が率いる朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)を、ここまで支えてきた頼もしい面々。物語が進めば新たな仲間との出会いが必ずやあるも…そして『虎に翼』(2024年度前期)の直道(上川周作)と花江(森田望智)である。ふたりの出会いは、形だけを見れば当時としては普通に近い。だが『虎に翼』が巧いのは、その普通の中にある感情を丁寧に拾い、視聴者がきちんと恋として受け取れる関係にしてみせた点にある。結婚がいまよりも制度や世間体と強く結びついていた時代、夫婦になることは幸せだけでは終わらない。暮らしの手応えと同じだけ、不安も背負うことになる。その現実が、直道と花江のやり取りから自然に伝わってくるのである。直道と花江の関係は、寅子(伊藤沙莉)が社会で闘う物語とは別の場所から、同じ時代を照らしていた。サブカップルが担う役割が、最もわかりやすく表れた例のひとつである。
こうして振り返ると、サブカップルはヒロインたちの脇で描かれる小さな恋では終わらない。物語の外側から、作品の空気を変え、登場人物たちの選択に別の光を当てていく存在である。だからこそ『ばけばけ』の庄田とサワも、今後の行方が気になって仕方がない。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK