Mrs. GREEN APPLEの“光と影”、10年の真実 大森元貴と恩人たちが語る『MGA』制作秘話

 メジャーデビュー10周年を迎え、日本中を熱狂させているMrs. GREEN APPLE。前人未到の記録を次々と更新し、日本のエンタメ史にその名前を刻み続けている。2025年11月28日より同時公開されたライブフィルム『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~ ON SCREEN』、ドキュメンタリー『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』も、日本映画史に残る試みであり、Mrs. GREEN APPLEの過去と現在、そしてこれからを知ることができる特別な作品となった。

 このたび、映画の大ヒットを記念し、バンドの中心人物であり両作の企画・製作総指揮を務めた大森元貴、Mrs. GREEN APPLEをデビュー前からよく知る(現在は日本クラウン株式会社にてディレクターを務める)大熊大介、『THE ORIGIN』のエグゼクティブプロデューサーも務めた渡辺雅敏による鼎談を実施。Mrs. GREEN APPLEのこれまでの歩みを振り返りながら、映画2作品の魅力を存分に語ってもらった。

Mrs. GREEN APPLEが結成当初から異彩を放っていたプロ意識

大森元貴

大森元貴(以下、大森):(大熊の持参したCDを見て)これ、懐かしい!

大熊大介(以下、大熊):インディーズ時代にライブ会場限定で売っていた『Introduction』だね。数量限定で作ったんですよ。しかも、メンバー直筆のナンバリングが書いてあるんです。逆に、数字が入っていないCDを持っているのはメンバーと関係者しかいなくて。かなりレアな代物ですね。

ーー大熊さんは、Mrs. GREEN APPLEの活動初期を知っている数少ない関係者の1人なんですよね。

大熊:元々、僕は東芝EMI(現ユニバーサル ミュージック)内のグレート・ハンティングという新人発掘・育成のセクションにいまして。ミセスがアマチュアだった頃からデビューするまでの約2年間を担当していました。出会ったときは高校生だったよね?

ライブ会場限定で販売されていた『Introduction』

大森:16歳くらいだったね。

大熊:「面白いバンドがいる」という情報を聞きつけて、ライブを観に行ったのが最初の出会いでした。当時から楽曲のクオリティもずば抜けていましたし、歌に関しても光るものがあって。「きっと、多くの人に受け入れられるバンドになるだろうな」と漠然と思っていましたね。そこからメンバーと仲良くなり、リハーサルを見に行かせてもらったんですけど、彼らのリハが本当にすごくて。

ーーどういうことでしょう?

大熊:基本的にアマチュアのバンドがリハスタでやることと言えば、演奏のチェックとか、ライブで披露する曲順の確認。ただ、ミセスはその頃からほかとは違っていて。必ず大きい鏡があるスタジオを押さえて、ライブと同じ立ち位置について、演奏しながら「それだとお客さんに伝わらないから、もっと大きく動こう」など、お客さんに伝えるためのリハをやっていました。僕もいろんなバンドを見てきましたけど、アマチュアでそんなことをやっているのは、ミセスだけでしたね。しかも彼らは「練習なんて家でやってくるものだ。スタジオに入る時点で、演奏は弾けて当たり前」というスタンスを、16歳のときから徹底していたことに衝撃を受けました。今の若いバンドマンとかミュージシャンに会うと、「ミセスが高校生のときはね……」という話をして「みんなも売れたいなら、外に発信していく意識を持つべきだよ」と伝えています。

大森:グレート・ハンティング時代は、我々にとっての青春期なんですよ。「大人の世界」や「プロの世界」に対して漠然とした恐怖心を持っていた中、大熊さんはその繋ぎ目になってくれた。友達のような関係であり、大事なことを教えてくれる先生のような存在として、ラフな距離感で我々の緊張、恐怖心、疑心暗鬼をほどいてくれました。まあ……これ以上は大熊さんに対して話すことはないかな。

大熊:ちょっと待ってよ!

大森:ハハハハ。今もこうして何気なく喋れていることが嬉しいです。我々のドキュメンタリー映画『THE ORIGIN』では、いろんな関係者にインタビューをさせていただきまして。大熊さんにもインタビューをさせてもらったんですけど、大熊さんのコメントは全カット。それが僕としては最高で!

大熊:これ、マジなんですよ!

一同:ハハハハ!

大熊:僕は趣味でゲームをやってるんですけど、異業種の人に「大ちゃんって、何の仕事してるの?」と聞かれて「音楽の仕事してるんだよね」と答えたんです。「そうなんだ! これまでどんな人を担当したの?」と言われて「Mrs. GREEN APPLEを担当していたよ」と言うと、彼らがすごくなり過ぎてるから誰も信用してくれないんですよ! 「大ちゃん、嘘はダメだよ」って。「いや、本当なんだ!」と言っても信じてもらえない。そんなタイミングに、元貴から「今、ドキュメンタリー映画を制作しているんですよ」と教えてもらって。豊島(圭介)監督からも「元貴さんのことを聞かせてください」と何度かカメラを回していただいて。

大熊大介

大森:結構な長尺でね。

大熊:長尺だったよね!? 1回どころじゃないもんね。

大森:トータルで1時間くらい撮影したと思う。

大熊:そうそう! 「本編のどこかに俺のコメントが入ってるでしょ」と思いますよね!? 『THE ORIGIN』が公開されれば、みんなに僕が言っていたことは本当だったと証明できるじゃないですか。で、公開初日に映画を観に行ったら、“1秒”しか映ってなかったんですよ!

大森:7月に開催したライブ『FJORD』(『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~』)の本番前に、「よーし、頑張れ!」と大熊さんが僕らの背中を叩くシーンがあるんですけど、3人ともそれをガン無視するっていう。

一同:ハハハハ!

大森:大熊さんの顔すら見ないから「3人には見えてないの?」みたいな映り方だったよね(笑)。でも、それも優しさなんだよ。大熊さんがアレだけ映画に協力してくれて、まったく映っていなかったら不義理になっちゃうから。

大熊:いやいや! こっちは知り合いを連れて映画を観に行ったのに、上映後に「面白かったけど、大熊さんは映ってました?」と言われたんだから。1秒だけでは「俺も出てる」とは言えないよ。

大森:いやいや、“1秒も”出られてるんだから! これは相当なことですよ!

大熊:(大森の勢いに押されて)そ、そうだよな……。

大森:(笑)。さすがに、このままだと大熊さんが成仏できないだろうと思って「大熊さんも一緒に話そうよ」と僕が直談判をして、今こうして取材を受けているわけです。

大森元貴が信頼する“大人たち”との絆

『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』©2025 MGA Film Partners

ーー渡辺さんは『THE ORIGIN』のエグゼクティブプロデューサーを担当されています。そもそも、どのような経緯でミセスと出会ったのでしょうか?

渡辺:大ちゃんが担当しているときから、ミセスの噂は聞いていたんです。それでメジャーデビューをするタイミングでライブを観に行って、ご挨拶させていただいたのが最初の接点ですね。当時からすごくキラキラしている印象を受けたのを覚えています。

大森:僕は学生時代からRADWIMPSを勿論聴いていて、ナベさんのスタッフブログも読んでいたんですよ(※渡辺はRADWIMPSのインディーズ時代からスタッフとして携わり、現在はRADWIMPSのレーベルヘッドを務めている)。初めてご挨拶をさせていただいたときは、「あのナベさんだ!」と思ったのが第一印象でした。当時からすごく親身になって相談に乗ってくれていたけど、チームとして直下で関わっていたわけではなくて。たまに会って僕のことを気にかけて励ましてくれるスタッフさん、みたいな存在。「会うたびに嬉しくなる人」という関係からスタートしました。

ーー『THE ORIGIN』のエグゼクティブプロデューサーをお願いされたのは、どんな思いがあったのでしょうか?

大森:ミセスはフェーズ2になって以降、一気に認知度が上がったと同時に、ガワの部分で「こういうバンドなんだ」と判断されることも多くなりました。だからこそドキュメンタリーを作る意味として、僕らが大切にしているコアな部分を、どれだけ高い精度で見せられるか、届けられるかが、肝になると思ったんですよね。そんな中で、バンドとしてのセオリーとか、バンドというのが非常に歪な集合体であり、サンクチュアリ(聖域)であることも、ナベさんは熟知されている。そんなナベさんにドキュメンタリー映画を統括してもらいたいと思って、2人で食事をしているときにお願いしました。

渡辺:最初に「なんで、映画のプロデュースなの?」と聞いたら「ミセスのスタッフには、長年にわたってバンドに関わってきた人がいないから」と、今言ったような説明をしてくれまして。いざ、エグゼクティブプロデューサーという立場に置かれてみて「あ、配置されたんだな」と分かったんですよ。スタッフの適材適所を見抜くことが組織作りでは一番重要だけど、それが難しいから、どこの会社も苦労してるわけですよね。でも、彼は素早い判断で的確に割り振ることができる。僕自身も「彼によって最適配置をされたんだな」と思いました。そこで初めてミセスのチームになれた感覚がしました。

大森:僕としても、ナベさんとご一緒できてすごくありがたいです。

(左から)渡辺雅敏、大森元貴、大熊大介

ーー改めて『THE ORIGIN』の総評をお聞かせください。

大森:2025年の“今残しておくべきミセス”を映画に残せたな、と思います。「今後もこの映画に支えられることがあるだろうな」と思えるような、僕らにとっての大きなセーブポイントになりました。

大熊:まず、Mrs. GREEN APPLEがこの10年で築き上げてきた規模感だったり、クオリティだったりのレベルが非常に高い。広い視野で見ても、ここまでの領域にたどり着けるアーティストって、まあ少ないですよね。今の音楽シーンを牽引するバンドの濃密な1年間を「よくここまで丁寧に切り取ったな」と思いました。昔からミセスを知っている自分としては、メンバー3人に対して懐かしく感じる場面もあれば、別人のように感じるような場面も映っていて、非常に面白かったです。

渡辺:一番強く思ったのはどこにも嘘がないですし、それでいて過不足がない映画だなと。作品というのは、「過」があっても「不足」があってもダメだと思うんですよね。今や社会現象を起こすほどになった彼らを、1年間密着させてもらい、それを過不足なく約2時間の映像に上手くトレースできたと思います。もしかしたら「もっとキャッキャした3人を観たかった」と感じる方もいらっしゃるかもしれないですけど、やはり劇場で公開する以上は、ライブの特典映像のようなオフショットムービーとは違う作品を出さなきゃいけない。その点で言うと、とてもいい形で作り上げられたと思います。

『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』©2025 MGA Film Partners

ーー特に、印象に残っているシーンはどこでしょう?

大森:僕も気になります。

渡辺:映画の最後に言った「Mrs. GREEN APPLEとは、彼ら(若井滉斗、藤澤涼架)のことを言う」もそうですし、何より僕が意識したのは彼(大森)が抱えているモノのレイヤーが分かるといいな、と。大森元貴はバンドと同時に組織も抱いていて、ちゃんと全員に愛と優しさを注いでいるんですよ。その姿が伝わるといいな、と思いましたね。ときには厳しい一面も見せるけど、厳しさを描くからこそにじみ出る愛を映し出したいと。

『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』©2025 MGA Film Partners

大熊:メンバーそれぞれが重い責任を持ってバンドをやっている中で、特に元貴はリーダーですし、一番重いモノを背負っていると思うんです。その中で(若井)ひろぱの週刊誌の件にもちゃんと言及していて。結構キツいことを言った後に、監督が「それはメンバーとしての大森元貴の発言だけど、中学からの友達としてはどう思う?」と聞いたときに「友達としては超心配!」と言うんですよね。Mrs. GREEN APPLEを背負ってるときの元貴の表情と、友達としての元貴の表情が、わずか十数秒の間でガラッと変わるところは『THE ORIGIN』の大きな見せ場の1つだと思いました。

大森:アレは豊島さんがナイスパスをしましたね。

渡辺雅敏

渡辺:その後の「そりゃそうよ、そりゃあそうさ!」は、しばらく日常会話で真似してた(笑)。

大森:アハハハ、面白い!

大熊:真似したくなるぐらい印象的ですよね! 売れてからのMrs. GREEN APPLEとしての表情と、10年前に出会った頃の無垢な元貴の表情が交差する場面だったので、個人的にはグッときましたね。

大森:僕としては、若井と藤澤の気持ちがアレだけ吐露されるというか、自身の言葉で語る機会を今までなかなか作れてこなかったので。それぞれが1枚画で話す様子が映画館で流れていること自体が、自分としてはグッと来ました。しかも、ミセスに対しての角度はみんな違えど、見えているポイントは同じで。気遣いの仕方とか心配りの仕方が三者三様なのが、しっかり明瞭化された映画だから、ミセスを作った人としても、いち観客としても新鮮に映りました。2人のインタビューシーンは、僕の中ですべて印象的ですね。

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