羊文学、梅田サイファー、ナナヲアカリ 2025年アニソンを“楽曲”的評価でベスト5総括
ナナヲアカリ「明日の私に幸あれ」
アーティストのナナヲアカリが歌った『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』エンディングテーマ「明日の私に幸あれ」は、昭和のアニソンのような懐かしさと耳に残るキャッチーさが群を抜いた。
アニメは、冒険者ギルドの受付嬢が残業を減らすために自らダンジョン攻略を行うという内容。楽曲はアニメの主人公・アリナがそのまま曲になったような歌で、ブラック企業の社畜さながらの日々を明るく笑い飛ばし、頑張る自分を全肯定してくれる言わば“OL賛歌”のような楽曲だ。同曲を口ずさんで明日への活力にした人も多かったろう。
アニメのエンディングでは曲に合わせてキャラクターがダンスする映像が流れ、それをマネして踊る動画もSNSでバズった。いっしょに歌って踊れるという部分では、HoneyWorks feat.ハコニワリリィによる『忍者と殺し屋のふたりぐらし』エンディングテーマ「にんころダンス」や、野球場で働く人たちをテーマにしたアニメ『ボールパークでつかまえて!』のキャラクターが歌うエンディングテーマ「ボールパークでShake! Don’t Shake!」もリピートしたくなる魅力を放っていた。
『かくりよの宿飯 弐』楽曲
アイデアで“なるほど!”となったのは、『かくりよの宿飯 弐』のエンディングテーマとしてヒロインである津場木葵の声優・東山奈央が歌った「涙のレシピ」と、第2話特殊エンディング曲として大旦那役の小西克幸が歌った「ひと匙の光」だ。タイトルからも想像できる通り、妖怪と人間が食事を通して心を通わせるストーリーで、どちらもキャラクターの心情に寄り添った温かくも切ないミディアムナンバー。面白いのは、その2曲は対になっていて合わせることで新たな1曲が生まれるところ。実際に第3話では東山と小西の声がデュエットのように重なった「涙のレシピ×ひと匙の光」が特殊エンディング曲として流れ、物語の展開との絶妙にリンクした歌詞と歌声が大きな反響を呼んだ。
アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クールエンディング主題歌「ふたり」も、オグリキャップ役の高柳知葉とタマモクロス役の大空直美が歌うデュエット曲。ライバルとひとことでは言い表しきれないふたりの関係性が如実に表現され、ミディアムのロックチューンであるところも『ウマ娘 シンデレラグレイ』らしさがあふれている。
『ダンダダン』劇中歌「Hunting Soul」
劇中歌に焦点を当てると『ダンダダン』第18話の劇中歌「Hunting Soul」は、原作に寄り添いながらメタルナンバーとしても非常にクオリティが高かった。演奏しているのが、メガデスのメンバーとしても活躍したギタリストのマーティ・フリードマン、そのマーティのツアーメンバーでもあるドラマーのChargeeeeee...、17歳のときから活躍している女性ベーシストわかざえもん、そしてボーカルはGRANRODEOのボーカルも務める声優・谷山紀章という、原作ファンも「こうきたか!」と驚いたキャスティング。作詞・作曲・編曲は、相対性理論の永井聖一。プロデュースは『チェンソーマン』などアニメ作品の劇伴を手がける牛尾憲輔という鉄壁。パワフルかつテクニカルな疾走感あふれるサウンドと、あのハイトーンとシャウトには誰もが頷いたはず。
物議となったのはひとつ残念ではあったが、それもクオリティがあまりにも高かった故のことだったのだろう。メタルという流れではJAM Project feat.BABYMETALによるアニメ『ワンパンマン』第3期オープニング主題歌「Get No Satisfied ! feat.BABYMETAL」も意外性にあふれていたほか、『ロックは淑女の嗜みでして』のオープニングテーマでBAND-MAIDの「Ready to Rock」も熱量の高さがアニメと見事に共鳴していた。
2026年のアニソンにも期待
ほかにも『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』エンディングテーマ「UN-APEX」(TK from 凛として時雨)や『mono』エンディングテーマ「ウィークエンドロール」(halca)、『光が死んだ夏』エンディングテーマ「あなたはかいぶつ」(TOOBOE)など良曲が多く誕生した2025年。2026年は高垣彩陽が手がける『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』のテーマソングに城田優が参加することで早くから話題。『うるわしの宵の月』では、UNISON SQUARE GARDENとして約2年ぶりのアニソンを聴くことができる。またアニソン製造マシン・オーイシマサヨシやHoneyWorksが手がける新曲も控えている。