『良いこと悪いこと』は“考察”を超えた一作に 問いかけ続けた“いじめ加害者”の贖罪方法

 この選択は、物語の方向性を大きく変える。高木は誰かを殺して決着をつけるのではなく、猿橋による独占インタビューに応じ、自らの過去を世間に公表する道を選んだ。クライマックスでの「いじめなんて無意味で、最悪だ。何も生み出さない。ただ奪っていくだけだ」という高木の懺悔は、謝罪であると同時に、長年向き合わずにきた自身への告白でもあった。どれほど後悔しても、どれほど変わろうとしても、紫苑を「ドの子」としていじめていた事実は消えない。それでも、その罪を背負ったまま生きていく姿を、公の場に晒したのである。

 この結末は、明確な救いや爽快感を用意しない。誰かが裁かれて終わるわけでも、すべてが許されるわけでもない。父親の過去が原因で高木の娘がいじめに遭う描写が示すように、加害の影は形を変え、世代を超えて続いていく可能性すらある。いじめは終わった出来事ではなく、時間差で人生を破壊し続ける行為なのだ。

 『良いこと悪いこと』が考察ドラマにとどまらなかったのは、「罰を受ければ終わり」「謝れば償いになる」といった分かりやすい答えを拒否した点にある。本作が残したのは、「消えない罪と、どう向き合って生きるのか」という問いだけだった。何が良いことで、何が悪いことなのか、その境界は最後まで揺らされ続ける。

 放送終了後も、この物語は視聴者に問い続ける。無自覚な言動が誰かを傷つけていないか。知らないうちに、誰かの人生を壊してはいないか。いじめに時効はあるのか。贖罪とは行為なのか、それとも一生背負い続ける状態なのか――。『良いこと悪いこと』は、テレビ画面の中だけで完結しない物語として、2025年のドラマシーンに確かな爪痕を残した。

良いこと悪いこと

ガクカワサキが脚本を手がけるノンストップ考察ミステリー。小学校の同窓会で、連続不審死が発生。同級生全員が容疑者となる中、犯人を巡る探り合いが始まる。

■配信情報
『良いこと悪いこと』
TVer、Huluにて配信中
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)ほか
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:Jun Futamata
制作協力:ダブ
©日本テレビ
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