『良いこと悪いこと』は“考察”を超えた一作に 問いかけ続けた“いじめ加害者”の贖罪方法
間宮祥太朗と新木優子がダブル主演を務めたドラマ『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)が、12月20日に最終回を迎えた。緻密な伏線と大胆なミスリードで“考察ドラマ”として注目を集めてきた本作だが、物語が進むにつれ、焦点は単なる犯人探しから、「いじめの加害者は、どのように罪を償うべきなのか」という重く、簡単には答えの出ないテーマへと移っていった。
本作は、同窓会をきっかけに再会した小学校時代の同級生たちが、タイムカプセルから掘り起こされた顔を黒く塗りつぶされた卒業アルバムを発端に、不審死へと巻き込まれていくノンストップミステリーである。その中心にいるのが、“キング”高木将(間宮祥太朗)だ。彼は子どもの頃、クラス内でいじめの主導的立場にあった人物である。
物語の序盤から重要な役割を担うのが、週刊誌記者の“どの子”猿橋園子(新木優子)である。『週刊アポロ』の記者として活躍し、現在は世間的にも知られた存在だが、彼女もまた小学生時代にいじめを受けた過去を持つ。高木らに標的にされた彼女は体育倉庫に閉じ込められた経験はトラウマとなり、現在も閉所恐怖症を抱えている。
前話では、高木自身の記憶が揺さぶられる重要な場面が描かれた。高木は、「どの子」と呼ばれていた存在が2人いたことを思い出す。転校生だった園子をいじめていた記憶の奥に、さらにその前から「ドの子」として瀬戸紫苑(大後寿々花)をいじめていた事実があったことに気づくのだ。園子へのいじめは、紫苑を標的にした行為が日常化した末に生まれたものであり、この記憶の回復は高木が自分自身を「後悔している元加害者」ではなく、「すべての起点にいた加害者」として認識し直す決定的な瞬間だった。
大人になった紫苑はピアニストとして生きていたが、自身の教室に娘を連れて現れた高木と再会したことで、過去のトラウマが一気に蘇る。ピアノが弾けなくなり、生活は崩れ、やがて彼女は自ら命を絶ってしまう。この出来事は、いじめが「過去の出来事」ではなく、時間を超えて人生を壊し続ける行為であることを強く突きつけた。
紫苑の死をきっかけに、彼女の婚約者だった刑事・宇都見(木村昴)は復讐を決意し、連続殺人事件の実行犯だったことが判明する。そして、最終回の終盤で明らかになるのは、スナック経営者の今國(戸塚純貴)と、園子の同僚である東雲(深川麻衣)が、紫苑のフリースクール時代の同級生であり、宇都見と共に事件に関与していた共犯者だったという事実だ。3人は卒業アルバムや夢を語る映像を入手し、復讐の舞台を整えていたのだ。
しかし、今國と東雲の真の目的は、単に高木を追い詰めることではなかった。かつて「ヒーローになりたい」と語っていた高木に、同級生を殺された復讐として今國を殺させ、その罪を背負わせることで、高木自身を犯罪者、つまり“殺された者たちのヒーロー”に仕立て上げることだったのである。今國は「いじめは人殺しと同じだ」「いずれ忘れてなかったことにする」と被害者側の絶望を突きつけるが、それでも高木は彼に手をかけることを選ばなかった。