末期がんの母、支える父が決断したデュオ安楽死 『両親が決めたこと』予告&場面写真公開

 2026年2月6日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開される『両親が決めたこと』の予告編と場面写真が公開された。

 本作は、2024年トロント国際映画祭の新たな挑戦作を評価するプラットフォーム部門において作品賞を受賞した人間ドラマ。テーマとなる“デュオ安楽死”とは、高齢夫婦どちらかが終末期に安楽死するとき、そのパートナーが健康であっても共に安楽死すること。ジョイント型ともいう。2024年2月。スペイン大手新聞社エル・パイス(ElPaís)は、オランダのドリース元首相が妻と共に同時に安楽死を遂げたことを伝え、オランダでデュオ安楽死が急増していると報じた。オランダだけでも2022年の1年間で29組の夫婦(計58人)に実施され年々増加傾向にある。本作はそんなデュオ安楽死を大胆に掘り下げて描く、高齢者を応援する。

 バルセロナの舞台女優クラウディアは末期がんの罹患者。癌は脳に転移し、錯乱や半身麻痺と自我の喪失が近づき、安楽死を選択する。クラウディアは子育てよりも舞台優先で生きてきた。お茶目な女優妻を支え、今なお愛してやまない夫のフラビオ。永縁なる夫婦は共に安楽死することを決意し、3人の子に打ち明ける。子供たちは父の考えに賛成しない。長女は母の操作と決めつけ喧嘩する始末。しかし父の意志は固く、両親はデュオ安楽死に必要な手順を進め、最後の旅の出発がにわかに訪れるのだが……。

映画『両親が決めたこと』本予告

 公開された予告編では、“デュオ安楽死”を選ぶ夫婦の存在が初めて明確に示され、その動機や背景の一端も明かされた。本作の脚本家クララ・ロケは取材の中で、「欧州では急速な高齢化とともに、孤独死や独居が深刻な社会問題となり、国によっては“孤独省”や“孤独担当大臣”が設置されるほど、孤独そのものが国家レベルの課題になっている」 と語っている。充実した公的ケアを誇る欧州でさえ、働き手不足、家族が遠方に暮らす“分散家族”、介護の長期化、医療・介護費の増大といった現実が福祉を圧迫している。その中で、「パートナーを失って生き続ける精神的苦痛」や「尊厳の喪失への恐れ」を抱える高齢者が増え、「同時に逝くことこそが最も幸福」という考えに至る精神的構造が生まれ、本作はその社会背景を親と子の視点を通してリアルに映し出す。

 あわせて公開された場面写真では、席を譲ってもらった際、末期がんの母を父が座らせようするバスのシーンなど、予告編内でも映された場面が切り取られている。

■公開情報
『両親が決めたこと』
2026年2月6日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開
出演:アンヘラ・モリーナ、アルフレード・カストロ、モニカ・アルミラル・バテット、パトリシア・バルガロ、アルバン・プラド
監督:カルロス・マルセット
脚本:カルロス・マルセット、クララ・ロケ、コーラル・クルス
撮影:ガブリエル・サンドル
編集:キアラ・ダイネーゼ
音楽:マリア・アルナル
配給:百道浜ピクチャーズ
2024年/スペイン、イタリア、スイス/英語、スペイン語/106分/16:9/原題:Polvo serán/英題:They Will Be Dust
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公式サイト:https://www.m-pictures.net/futarigakimeta/

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