『シナントロープ』は若手俳優陣だからこそ面白い! 此元和津也の脚本が光る会話劇の妙

 「シナントロープ」。聞きなれない言葉だが、“人間社会の近くに生息し、人間や人工物の恩恵を受けて共生する野生の動植物”という意味らしい。ネットで調べると、カラスやスズメのことを指すと書かれていた。

 現在放送中のドラマ『シナントロープ』(テレ東系)は、アニメ『オッドタクシー』や漫画『セトウツミ』の此元和津也が原作・脚本を担当し、星野源や乃木坂46などさまざまなアーティストのミュージックビデオも手掛ける山岸聖太が監督した青春群像ミステリー。

 物語の舞台となるのは、街の小さなバーガーショップ「シナントロープ」。そこで働く若者の1人、大学生の都成剣之介(水上恒司)は、バイト仲間の水町ことみ(山田杏奈)に、密かに想いを寄せていた。そんなある日、シナントロープで不可解な強盗事件が発生する。静かだった日常が少しずつ変化し始めるというストーリーだ。

 メインキャストとして出演するのは、注目の若手俳優8人。都成剣之介役の水上恒司とヒロイン・水町ことみ役の山田杏奈を筆頭に、明るいお調子者の木場幹太役に坂東龍汰、地味で真面目なお嬢様の里見奈々役を影山優佳、漫画家を目指す美大生の田丸哲也役には望月歩、さらに青髪のメンヘラ女子・室田環那役を鳴海唯、バンドマンの塚田竜馬役に高橋侃、そして静かで不気味な新人バイト・志沢匠役を萩原護が演じている。

 第1話からそれぞれのキャラが立つシーンが描かれる。この8人、三者三様ならぬ八者八様でとても魅力的なのだ。鳥好きの水町より、それぞれをイメージした鳥類名が付けられるのだが、とくに、 “ハシビロコウ”と呼ばれる志沢(萩原護)、 おちゃらけパワー全開な“キバタン”こと木場(坂東龍汰)、闇深そうな“ベニコンゴウインコ”の室田(鳴海唯)らの姿は印象に残る。テンポよく進んでいくストーリー展開と、リアルさのある若者たちの会話は、まさに青春群像劇とも言えるだろう。

 物語を彩るのは若手だけではない。シナントロープの面々と対峙していくことになる裏組織バーミンのトップ・折田を、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』にも出演していた染谷将太が演じている。初回では素性がよく分からなかった折田(染谷将太)だが、回を追うごとにその存在感は増していく。穏やかな口調と能面のような笑顔で躊躇なく人を殺し、平然と過ごす折田を演じた染谷からは圧倒的な演技力を感じる。また、折田に心酔する龍二(遠藤雄弥)と、その幼なじみの九太郎(アフロ)、そしてシナントロープを訪れるお客の面々も本作にとって欠かせない存在であることを記しておきたい。

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