語り継がれる天海祐希VS桃井かおりの演技バトル “伝説回”にみる『緊急取調室』の醍醐味

 天海祐希主演のテレビ朝日系木曜ドラマ『緊急取調室』第5シーズンが12月18日に最終回を迎えた。

 叩き上げの取調官・真壁有希子(天海祐希)が、可視化設備の整った特別取調室で取調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班」(通称・キントリ)のメンバーとともに、 数々の凶悪犯と一進一退の心理戦を繰り広げる本作。人気シリーズとして不動の地位を確立してきたが、12年の時を経て連ドラと映画でついに完結することが発表されており、最終回では、キントリが連ドラ最後の取調べに臨んだ。

 取調べの相手は警察学校・教官の滝川隆博(玉山鉄二)。真壁たちは宮本健太郎(大橋和也)という学生が射撃訓練中に同期生へ向けて発砲した事件に、滝川が関わっているのではないかと考えたのだ。最初は頑なな態度を見せていた滝川だったが、キントリチームが見つけ出した証拠や真壁と梶山(田中哲司)の語りかけるような言葉に、突然泣き崩れた。真壁たちが取調べによって相手を“オトした”瞬間である。

 このように、本作の大きな見どころのひとつは、取調室で対峙する被疑者と真壁の緊迫したやりとり。真壁が完全に“オトした”とわかることもあれば、相手のほうが上手だったのでは……と思わせられることもある。そんな中で、シリーズを通してファンの間で“伝説回”と言われているのが、2021年に放送された第4シーズンの第1話と第2話で繰り広げられた桃井かおり演じる大國塔子と真壁の“取調べ劇”である。

 そんな“伝説回”が『緊急取調室』特別編として、12月19日20時よりテレビ朝日系で放送される。

 桃井が演じる大國は、50年前に人民の連帯を訴えた“7分間の演説”が伝説となり、「黒い女神」と呼ばれた活動家。その後は潜伏していたのだが、なぜか50年経った今になって、ふたたび動き出し、ハイジャックを敢行。真壁らキントリの取調べを受けることになる。

 真壁は大國がハイジャックをしようとした機内に偶然乗り合わせており、その前には持病があり、特別な荷物を機内に持ち込まなければならないが、「い、医者の証明書が、み、見つからなくて」とあたふたする大國を真壁が手助けする場面も。この時の大國は、1人で飛行機に乗って旅行ができるかも怪しまれるほどの老いぶりでハイジャックするような気力も体力も持ち合わせていないように見えた。しかし、真壁が警察の人間とわかると「目つきが悪い、動揺しない、救いようのないおせっかい、サツ以外に考えられない」と言い放ち、態度を一変。まるで大國のなかに2つの人格があるかのような変貌ぶりを見せていた。

 大國は全面ガラス張りの特別取調室でもキントリを翻弄。真壁に対しても「真壁ェ、逃げるのか、逃避は1番の恥だぞ」「口先だけの女刑事」と煽り、真壁が取調べのために大國と同じテーブルにつくと互いに一礼。「我々の推論を申し上げましょう」と真壁が先陣を切ると「つまんない推論なんて聞かない。私が質問する」と主導権を奪った。そこには言葉でぶつかり合うリングがたしかに存在しており、まさに戦いのゴングの音が鳴り響き、戦いの火蓋が切って落とされたようなヒリヒリ感がこちらにも伝わってくる。

 だが、この回の真の敵は、大國を利用して都合の悪い事実を隠蔽しようとする政治家やそれに加担しようとしている警察内部の上層部。取調べが進んでいくと、真実を真正面から追求して、暴こうとする真壁と、すべてを理解した上で潜り込み、内側から暴いていこうと目論んでいる大國の対比も見えてくる。少しモヤモヤするものは残るかもしれないが、目の前の相手をオトせるかどうかだけではない、『緊急取調室』シリーズのおもしろさも感じられるものとなっている。

 桃井と天海の“演技の戦い”を楽しむだけでなく、最終回の余韻にさらに浸るため、そして、12月26日公開の映画『緊急取調室 THE FINAL』に備えるため、この“伝説回”は必見である。

■放送情報
『緊急取調室』特別編
テレビ朝日系にて、12月19日(金)20:00~21:54放送
©︎テレビ朝日

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