“愛され戦士”志田こはくは間違いなく救世主 スーパー戦隊シリーズの交代劇を振り返る

 原典ともいえるシリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年~)でいきなり交代劇は発生している。カレーが大好きなことで現在もよく知られるムードメーカー・キレンジャー/大岩大太が、初代を演じた畠山麦の出演作品のスケジュールの都合により一時離脱、作品内では別の支部に赴任というかたちをとり、第55話より甘党の2代目キレンジャーが登場し活躍するものの、第67話で殉職、大岩が復帰するという流れとなった。

 このような変身前の俳優の交代劇を“2代目”という別人として処理するパターンが最も自然な気がするが、実際にこのキレンジャーをはじめとする2代目パターンは、複数存在する。

 第3作の『バトルフィーバーJ』(1979年~)は、5人中2人が途中で2代目に交代した唯一の戦隊だ。女性戦士のミスアメリカがアメリカへ帰国という設定のもと、第24話から“2代目”に交代するかたちとなった。そしてバトルコサックは初代が第33話で殉職、やはり2代目へと交代することとなった。

 第5作『太陽戦隊サンバルカン』(1981年~)は、リーダーでありシリーズの“顔”といっていいレッドが途中交代するという展開に。

 今回の『ゴジュウジャー』の俳優交代劇は、ネガティブな内容によっての緊急交代、そして女性戦士ということもあり、第8作の『超電子バイオマン』(1984年~)のイエローフォーの交代劇を思い起こすファンも少なくなかった。同作では俳優が出演できない事情を考え、変身が解けない状態で変身後のスーツ姿のまま出演させ、その後殉職したのち2代目に交代という壮絶な交代劇となった。

 はたしてゴジュウユニコーンはどう交代するのか。考えられたのは、何らかの設定を盛り込んで“2代目”に正式交代するパターン、あるいは、何事もなかったかのように同一人物として交代するパターンの2つだ。

 ちなみにいわゆる戦隊チームのメンバーではないが、準レギュラーのような存在で作品内に登場していたキャラクターを演じる人物が途中交代したのが、第20作の『激走戦隊カーレンジャー』(1996年~)だ。敵組織の女性幹部の妹という設定でお騒がせ役的な存在のラジエッタの演者が途中交代したのだが、“2代目”としてでなく、同一人物として登場、その際に「ちょっと見ん間に雰囲気変わったんちゃうか?」というセリフをはさむことで、交代をちょっとした笑いとして処理した事例もあったため、志田がかつて演じたオニシスターや出演した『ドンブラザーズ』の雰囲気から、そのパターンも一部で予想されていた。

 蓋をあけてみれば、前半で記した通り、2代目でない同一人物、しかも「雰囲気が変わった」などでもなく、「顔と声が戻らなくなった」という、ファンの杞憂を軽々と超えてくる大胆すぎる交代劇だった。そして、制作側、視聴者側どちらにも絶大な信頼が志田にあったことを強く実感することとなった。

“銀色”と“金色”のギャバンの姿が 『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』超予告公開

2026年にテレビ朝日系で放送がスタートする『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の超予告と2種類のティザービジュアルが公開され…

 発表されている通り、スーパー戦隊シリーズのシリーズ終了というあまりにも大きなショックも、この歓迎ムードを後押ししたのではないだろうか。新シリーズとして『宇宙刑事ギャバン』の復活が発表されるも、やはりそれは喜ばしくも別物である。そんな気分に差し込んだ光のようなまさかの志田の登場は、その明るいキャラクターもともなって、結果的に作品単体だけでなくシリーズそのものにとっても、志田こはくが“救世主”のような存在になったのではないだろうか。

 誰かがピンチのときに力を合わせてそれを乗り切る。これこそが単体でなくチーム/組織で戦う戦隊ヒーローの大きな魅力であろう。今回の場合は、おそらく演者とスタッフすべての力を合わせた結果だ。

 集団ヒーローの金字塔といっていい一大シリーズの大ピンチに、それをあらためて顔芸と、全力で演じきることで教えてくれた。それが志田こはくという存在だ。

■放送情報
『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』
テレビ朝日系にて、毎週日曜 9:30〜10:00放送
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/50ger/

関連記事