興収で読む北米映画トレンド

『ズートピア2』予想を上回る成績で北米No.1 中国では歴代No.2のスマッシュヒットに

 2025年の感謝祭(サンクスギビング)の週末は、ディズニー・アニメーション・スタジオ最新作『ズートピア2』が北米の映画興行を制した。週末に先駆け、感謝祭前日の11月26日に公開されるや、週末3日間で興行収入9600万ドル、5日間で1億5600万ドルというスマッシュヒットとなっている。

 『ズートピア2』の滑り出しは予想を上回るもので、感謝祭の週末としては『モアナと伝説の海2』(2024年)に次いで歴代2位。週末3日間は、前売りではなく当日いきなり劇場に足を運んだ観客が全体の約6割を占めるなど、予測不能のスタートとなった。

『ズートピア2』©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 2016年の大ヒット作『ズートピア』の続編となる本作は、動物たちが人間のように暮らす都市・ズートピアで、ウサギの警察官ジュディと、キツネの相棒ニックが、ズートピアにいないはずだったヘビのゲイリーを追う。なぜ、この街には哺乳類しかいないのか。ヘビたちが姿を消した理由とは?

 本作はアメリカでは久々のファミリー向けアニメーション映画で、しかも作品としての評価も高い。Rotten Tomatoesでは批評家スコア91%・観客スコア95%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価を獲得した。

 観客を性別・年代別に見てみると、25歳未満の女性が全体の3分の1にあたる34%、25歳以上の女性が26%、25歳未満・25歳以上の男性がそれぞれ20%ずつ。ヒットのカギである女性客と若年層をしっかりつかんだうえ、日常的に映画館へ足を運んでいない層が全体の半数以上を占めたことが明らかになっている。

 また本作は、北米よりも海外市場ですさまじいヒットを記録。海外興収はなんと4億40万ドル(!)で、全世界興行収入は5億5600万ドル。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)に次いで歴代4位、すなわち世界興収20億ドル超えを十分に狙えるスタートなのである。

『ズートピア2』©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 しかも特筆すべきは、中国市場だけで2億7200万ドル(!)という圧倒的な数字を記録し、外国語映画として『アベンジャーズ/エンドゲーム』以来歴代第2位の成績を樹立したこと。コロナ禍以降、中国は海外映画の上映を制限しており、ハリウッド映画がヒットしづらい状況が続いていた。大手スタジオも中国でのビジネスを重視しなくなっていたが、本作はイレギュラーなヒットとなったのである。

 ディズニーは、前作『ズートピア』が中国で興行収入2億ドル以上のヒットを記録し、海外市場のなかでも特に大きな支持を得ていることを認識していた。2023年には上海ディズニーリゾートにて世界唯一の『ズートピア』エリアをオープンしており、本作の世界公開に先駆け、11月18日には本作のワールドプレミアを開催している。

 こうした積み重ねの結果、『ズートピア2』は中国公開からわずか5日で前作の累計興収を上回った。中国でも観客の高い評価を得ており、最終興収は5億ドルを超える見通しだ。中国では『アバター』シリーズも人気があるため、ディズニーは『ズートピア2』と『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の2本連続ヒットに期待をかけている。

 『ズートピア2』の日本公開は12月5日。日本も国産作品中心の興行が長らく続いているものの、海外市場に続いてスマッシュヒットとなるか?

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