『べらぼう』“俺たちの蔦重”が戻ってきた! “プロジェクト写楽”までの道のりを再整理

 待ちかね山のホトトギス! そうよ、これを待っていた! ここ最近は、「蔦重(横浜流星)の何よりの利点であるはずの“読み”が、微妙に外れているように思うのだ」とか「『ふんどしのかみ』こと松平“越中守“定信(井上祐貴)をあまりにも意識し過ぎて、視野狭窄に陥っているように見受けられる。そんなことでは、持ち前の“穿ち”の精神も、発揮できないではないか」とか、蔦重に対して散々苦言を呈していた筆者が待ちかねていたのは、まさしくこれだった。

 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回「その名は写楽」は、蔦屋重三郎、最大にして最後の「案思(あんじ)」――「プロジェクト写楽」が、いよいよその全貌をあらわにする、待望の回となった。

 第44回「空飛ぶ源内」。身上半減はもとより、てい(橋本愛)の体調不良など、沈鬱なムードが漂っていた耕書堂に、ある日、重田七三郎貞一/のちの十返舎一九(井上芳雄)と名乗る戯作者がやってくる。彼がもたらした「平賀源内(安田顕)は、実は生きている」という話を契機として、「もし仮に、平賀源内が生きているとするならば?」という「お題」のもと、2人であれやこれやと想像をめぐらせながら、にわかに生気を取り戻してゆく蔦重夫妻。その流れで、江戸を去った平沢常富/朋誠堂喜三二(尾美としのり)や、蔦重の身上半減以降疎遠になっていた太田南畝(桐谷健太)など懐かしい人々との再会もありつつ、店の軒先に置かれた『一人遣傀儡石橋』という謎の戯作の内容に、蔦重夫妻は大いに沸き立つのだった。「本人だよ。これ書けるのは源内先生しかいねえよ」。

 そこには、差し書きが挟み込まれていた。「八日申の刻、安徳寺にお越しあるべく候」。かくして、安徳寺に足を運ぶ蔦重だが、そこに待ち受けていたのは平賀源内ではなく、失脚したはずのふんどしの守こと、宿敵・松平定信だった。定信以下、長谷川平蔵宣以(中村隼人)、田沼意次(渡辺謙)の側近だった三浦庄司(原田泰造)、さらには田沼時代の大奥で筆頭上臈御年寄を務めていたという高岳(冨永愛)など、一同が顔をそろえる座敷で定信が語ったのは、江戸城内で暗躍する「巨悪」――平賀源内を死に至らしめ、田沼意次を失脚させ、挙句の果てには、定信自身も排除した、大御所・一橋治済(生田斗真)の所業だった。「どうだ、蔦屋重三郎。我らと共に仇を討たないか?」と迫る定信だが、肝心の蔦重は釈然としない表情を浮かべている。そりゃ、そうだろう。定信と言えば、恋川春町(岡山天音)を死に至らしめた人物であるどころか、自身に身上半減の刑罰を与えた張本人なのだから。

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