神木隆之介が“脇役”で終わるはずがない! 『もしがく』を紐解く“鍵”としての蓬莱省吾
もちろん彼は、これまで何もしてこなかったわけではない。新人の放送作家であり、この座組を支える役割をずっと担ってきた重要な存在だ。けれども気になるのが、あまりにも“支える側”に徹し過ぎているということ。つまり、そういう役どころだとはいえ、あまりにもキャラクターの主張が薄いのだ。個性的な面々に囲まれているものとあって、印象が薄い人物だともいえる。あまりパッとしないのだ。ちょうど一年前には日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)で主演を張っていた、あの神木隆之介が演じる人物がである。『もしがく』での神木は脇に徹し、かなり厳しく蓬莱というキャラクターをコントロールしているように映っているからこそ、ここから大きな動きを見せるのではないかと思うのだ。
とはいうものの、徹底して脇に控え続ける神木が素晴らしいのもまた事実。菅田の熱演や、「コントオブキングス」のふたりを軽妙に演じるバイきんぐの西村瑞樹とラバーガールの大水洋介に引っ張られてもおかしくはないだろう。が、神木の演技はフラットなままだ。非常に安定している。もちろん、蓬莱は冷めた人物というわけでもない。焦ったり、興奮したりする姿だって見せる。個性的にもほどがあるこの面々の中で、ただ彼だけがフラットな立場を取り続けているのである。
番組公式サイトに記されている蓬莱省吾の紹介文に、「“三谷青年”がモチーフになっている。」とある。これは改めて気になる一文だ。“小劇場ブーム”のあった1984年当時の三谷自身を投影したキャラクターだということなのだろうが、もう少し違う見方もできるのではないだろうか。繰り返しになるが、この『もしがく』は三谷が手がけている作品だ。演出は別の者たちが手がけているものの、この世界を動かせるのは創造主の三谷だけである。そしてそんな三谷を投影したキャラクターを、神木が演じているのだ。
まさかここからメタ展開に進んでいくとは思えないが(“蓬莱省吾=三谷青年”が視聴者に語りかけてきたら、それはそれで面白いが)、今後の大きな一手を担うのは、やはり神木なのではないかと思う。ドタバタ喜劇だからこそ、細部に注目していきたいものだ。
1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。
■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
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