『イクサガミ』に世界中が大興奮! 流血沙汰の撮影をこなした岡田准一らのリアリティ

※本記事は『イクサガミ』のネタバレを含みます

 Netflixシリーズ『イクサガミ』が、世界各地で大反響を呼んでいる。当然だ。直木賞作家・今村翔吾による熱い熱い侍バトルロワイヤル小説を、主演・プロデューサー・アクションプランナーの岡田准一と、『最後まで行く』(2023年)や『正体』(2024年)の監督・藤井道人が、文字通り命を削って映像化しているのだから。面白くないわけがない。事実、侍アクションの最高峰として、全世界に誇れる作品だ。また、『散り椿』(2018年)や『燃えよ剣』(2021年)などの侍アクションを作り続けてきた岡田准一にとって、集大成ともなる作品だ。だが本人は、「集大成ではなく、夢を叶えるための一歩目」(※)と語っている。まだ二歩目、三歩目があるのだ。恐ろしくも楽しみだ。

 物語の舞台は、侍の世が終わりを告げた明治時代。京都・天龍寺に集まった292人の志士たちが、10万円(現代の貨幣価値で数十億円)という大金を懸け、「蠱毒」という名のデスゲームを争う。各自に配られた木札を奪い合い、東京、いや、「あの日消えた江戸」を目指す。まず、天龍寺を出るだけでも2点が必要となる。つまり、必ずひとりは殺さなければならない。

 ここから第6話までひたすらに壮絶なバトルが繰り広げられるのだが、バトル解説の前に触れておかねばならないキャラがいる。ルール説明をおこなう主催者側のフロントマン、槐(えんじゅ/二宮和也)である。終始にこやかで紳士的な人物だ。だが、ちらほらと冷酷さやドス黒さや醜悪さが垣間見え、小さく華奢な体躯でありながら、その場に集まったどの人間よりも恐ろしく見える。艶のある声で非常に闊達に喋りながらも、場がざわついた際の「だぁまりなさぁぁい!!!」の破壊力たるや。その美声は、一気に母音にまで濁音がついたような蛮声となる。その声の濁りようだけで、いかにこの人物が凶悪な人間なのか、一瞬にして理解させてしまう。

 極めつけは、部下に指示を出す際の独特の“舌鼓”(ぜっこ)である。この舌鼓は、本来馬に指示を出すときに使うものであり、人間相手に用いるものではない。この槐という人物が、敵だけではなく味方となる人間までも、等しく公平に見下していることがわかる。また、この舌鼓をおこなう際、非常に醜悪なイヤ~な顔になる。見てはいけないものを見てしまった気分になる。ちなみに今村翔吾の原作では、槐の合図は「ぽん」と手を打つだけである。この舌鼓を用いることを考えたのは、藤井監督か。あるいは岡田准一か。はたまた二宮和也本人か。なんにせよ、かわいい顔してこれだけ不快感を与えるキャラは、なかなか観たことがない。岡田准一が「ニノは天才」と言うのも、よくわかる。

 槐の、同じくすばらしく濁った「はぁぁじめぇぇぇぇぇ!!!」の合図により、天龍寺境内で大乱戦が始まる。主人公・嵯峨愁二郎(岡田准一)は、本来は京八流という武術の達人でありながら、戊辰戦争の際に受けた心の傷により、刀を抜けなくなっていた。でありながら、たまたま目に入ってしまった12歳の少女・香月双葉(藤﨑ゆみあ)を守りながら戦うこととなる。著しく不利だ。だが刀を使えないながらも、やはりその体術はすばらしい。巨漢・立花雷蔵(一ノ瀬ワタル)を、逆一本背負いで頭から落とす。肘を極め折りつつ後頭部から落とすので、受身が取れない。当然柔道では反則である。この背中合わせで担ぐ投げ方や、腕刀(いわゆるラリアット)を多様することから、愁二郎の体術は合気道的なアプローチが多く見られる。

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