影山優佳、『ESCAPE』『シナントロープ』で見事な演じ分け 2025年は幅広い役柄で躍動
誘拐に端を発した結以(桜田ひより)と大介(佐野勇斗)の逃亡劇は、思いもよらない展開へと突入している。ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(日本テレビ系/以下、『ESCAPE』)の第5話は、2人の関係性が徐々に変化していることを特に実感するエピソードになった。
結以の父親である慶志(北村一輝)に懸賞金をかけられたり、インフルエンサーであるYouTuberに動向を追われたりと、さまざまな手段で居場所を探られる結以と大介。それでも彼らがここまで逃げおおせることができた理由のひとつに、大介の元恋人である莉里(影山優佳)の存在がある。彼女が2人を匿っていなければ、逃亡劇は早々に幕を閉じていたことだろう。
突然、家に押しかけてきた2人を受け入れる彼女は、もちろん心優しくもあるのだが、状況に流されやすい性格とも言い換えることができる。実際、莉里は不倫であることを悟りながらも、自身のことを必要だと言ってくれる畑中(内博貴)と交際する現状から抜け出すことができないでいた。
そんな彼女の複雑な心境だけでなく、結以と大介を大切に思う気持ちを一つひとつの言葉から汲み取ることができたのは、莉里を演じた影山の芝居によるところも大きい。第4話で、ハロウィンに乗じた仮装をして街に繰り出したあと、3人で夜ご飯を食べるシーンでは、結以の言葉に呼応して莉里の秘めていた思いが溢れ出る。
自信なさげな表情で、声を震わせながら「私だって今のまんまでいいなんて思ってないよ。でも会いたいって言われたら断れない。彼は私が必要だって言ってくれるからさ」と吐露する姿に、不倫関係とわかっていても抜け出せない莉里の真に迫った心情が痛いほど伝わってきた。
影山が話すセリフは繊細な感情を帯びている。そして、キャラクターの個性や性格を言葉ひとつで視聴者に伝える力があるように思う。
たとえば、秋クールで放送中の『シナントロープ』(テレ東系)では、真面目な優等生である里見奈々を演じている。ハンバーガーショップでアルバイトとして働く里見は英語を流暢に話すキャラクターで、水町(山田杏奈)に“バーミン(害虫)”の正しい発音を教えている姿も印象的。ただ、英語が堪能なことも忘れるほどに、里見を演じる影山のキャラクターの個性を表出させる芝居に驚かされた。人見知りな里見の言葉がつっかえてしまう喋り方や、大人数でいるときの一歩引いた控えめな態度など、彼女が培ってきたパーソナルを一挙手一投足で表現している。
また第6話で里見は、好意を寄せる田丸(望月歩)が同じ大学のゼミメンバーから、就活をせずに漫画家を目指していることを小馬鹿にされている様子を目撃する。彼が漫画家になる夢を目指す後押しをしていたからこそ、ただ見ていることしかできないもどかしさと悲しみが滲む表情には、胸がキュッと締めつけられるような痛みを感じた。
一見、莉里と里見はどちらも自分に自信がないキャラクターで、人物の設定が似通っている部分もある。しかし、影山は2人を明確に演じ分けており、雰囲気や仕草の細やかなニュアンスを意図的に変えながら、それぞれの異なる個性を観ている側にも認識させている。まさに繊細な感情表現が全身に帯びる、影山の芝居の魅力が堪能できる両作となっている。
そんな彼女の2025年の活躍は言うまでもなく、なんと連続ドラマ5本に出演。1月に放送された日曜劇場『御上先生』(TBS系)では、バイリンガルの帰国子女・倉吉由芽を演じ、第4話のディベートシーンでは鮮烈な存在感を放った。
さらに、春クールの『ムサシノ輪舞曲』(テレビ朝日系)では主人公の龍平(正門良規)に好意を寄せる沼田ヨリコの恋心を言葉の節々に忍ばせる。続いて夏クールの『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)にもレギュラー出演を果たすと、晴太(嶋田鉄太)の小学校の担任である木本美樹として、生徒たちや朝山家を優しく見守る存在となった。聡明な生徒役から大人の目線を持つ先生役まで、幅広い年齢と役柄を演じ分けられるのも、影山の俳優としての凄みを感じる部分だろう。
ドラマ『ESCAPE』と『シナントロープ』において、似ているところもありながら、個性の異なるキャラクターを巧みに演じ分けた影山。ぜひ、両作品の立ち振る舞いを見比べながら、彼女の芝居の繊細さを体感してほしい。
ひかわかよが脚本を手掛けたサスペンスドラマ。20歳の誕生日に誘拐された八神製薬の令嬢・結以は、身代金目的の犯人になぜか「一緒に逃げてほしい」と懇願する。彼女の真の目的とは一体何か。
■放送情報
『ESCAPE それは誘拐のはずだった』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~23:00放送
出演:桜田ひより、佐野勇斗、北村一輝、志田未来、富田靖子、山口馬木也、松尾諭、結木滉星、ファーストサマーウイカ
脚本:ひかわかよ
演出:小室直子、長沼誠ほか
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:秋元孝之、明石広人
制作協力:オフィスクレッシェンド
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/escape/
公式X(旧Twitter):https://x.com/escape_ntv
ドラマプレミア23『シナントロープ』
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送にて、毎週月曜23:06~23:55放送
Prime Videoにて、各話放送終了後から見放題独占配信
ネットもテレ東(テレ東 HP、TVer、Lemino)にて見逃し配信
出演:水上恒司、山田杏奈、坂東龍汰、影山優佳、望月歩、鳴海唯、萩原護、高橋侃、遠藤雄弥、アフロ、森田想、染谷将太
原作・脚本:此元和津也
監督:山岸聖太
音楽:江﨑文武
オープニングテーマ:柴田聡子 & Elle Teresa「ときめき探偵 feat. Le Makeup」
エンディングテーマ:S.A.R.「MOON」
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)、平賀大介(P.I.C.S.)
プロデューサー:前田知樹(テレビ東京)、原田宗平(P.I.C.S.)、神戸麻紀(P.I.C.S.)、竹迫雄也(アスミック・エース)
制作:テレビ東京、P.I.C.S.
制作協力:アスミック・エース
製作著作:「シナントロープ」製作委員会
©此元和津也/「シナントロープ」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/synanthrope/
公式X(旧Twitter):https://x.com/premiere23_tx
公式Instagram:https://instagram.com/premiere23_tx
公式TikTok:https://tiktok.com/@premiere23_tx