『ばけばけ』花田旅館は史実通り? 「こんな人がいたら」を具現化した生瀬勝久×池谷のぶえ
髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
しじみ売りをするトキ(髙石あかり)のお得意先であり、来日したヘブン(トミー・バストウ)の滞在場所となったのは花田旅館。主人の平太を生瀬勝久、女将のツルを池谷のぶえが演じ、お茶の間にさりげない笑いを届けている。
制作統括の橋爪國臣は、生瀬と池谷のコメディセンスを「素晴らしいですよね」と絶賛。「僕はのぶえさんのお芝居が大好きで、チャンスがあれば出てもらいたいと思っていました。いかんせん舞台を中心に活動されている方なのでスケジュールが合わないことが多いのですが、今回はタイミングよく出演していただけました。もちろん生瀬さんもお忙しい方なので、日程が合って本当にありがたかったです。この2人に演じていただけたら楽しいぞと、最初から思っていました」と、狙い通りのキャスティングに声を弾ませる。
「生瀬さんも出演発表時のコメントでおっしゃっていましたが、花田旅館は物語における一種の清涼剤のようなものでして。展開が重くなっていく中でも、あの場所だけは明るさが担保されていて、トキを100%守ってくれる。だからこそ、本当に見ていて楽しい方たちに演じていただけたらと思っていました。しかも、それがコントになってはいけないんですよ。素でやっているけど楽しい、2人の会話を延々と聞いていられる、というシーンにしたいと思っていました」
さらに橋爪は「放っておくと、2人はずっと喋っていると思います」と笑い、「とても速いテンポでやっています」と現場の様子を報告。意外にもセリフにアドリブはほとんどないそうで、たとえば第32話で描かれた“ツルの朝稽古"も台本通り。それぞれが脚本からイメージを膨らませ、動きや表情で自然な笑いを生み出しているという。
そんな生瀬、池谷と共に花田旅館のシーンを盛り上げているのが、女中・ウメを演じる野内まる。彼女の起用理由について、橋爪は「まずは、あの2人のお芝居についていける人じゃなければいけない。そこを絶対条件として選びました。ウメは、このドラマの中では少し天然キャラだと思います。だけど、時々もっともらしいことを言う。そんな面白さが表現できる方にお願いしたいと思っている中で、我々が注目していた若手俳優の一人である野内さんにぜひ出てほしいなと思いました」と振り返る。
「実際にお芝居を観ても、すごく面白いです。生瀬さんがいて、のぶえさんがいて、髙石さんがいて、吉沢(亮)さんがいて、(岩崎)う大さんがいて、トミーさんがいる。あの空間で臆することなく堂々と立ち回っていますし、全然負けていない。素晴らしい俳優さんだなと思います」
なお、史実においてハーンが滞在していたのは富田旅館。主人と女将のキャラクター設定には「こんな人たちがトキの側にいたらいいな」といった制作陣の願いが込められているが、旅館自体に関する資料は多く残されている。
橋爪は「昭和初期に富田旅館の女将さんに聞き取り調査をした『富田旅館における小泉八雲』という薄い冊子がありまして。それは内容に間違いが多いとも言われている資料ですが、ハーンも富田旅館についてはいろいろと書いています」と語り、自身に起きた運命的なエピソードを明かす。
「松江にいらっしゃる富田旅館のご子孫と、たまたまお会いしてご挨拶をしたんです。今はもう旅館業はされていらっしゃいませんが、今に伝わる当時のお話をいろいろと聞きました。当時の間取りもすべて残っていて、『ここにこういう場があった』『このくらいの規模の旅館だった』と、参考にしてセットを作っています」
富田旅館への敬意と、ドラマならではのユーモアが息づく花田旅館。そこで生まれる絶妙な笑いが、今後も物語を優しく支えていく。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK