『ザ・ロイヤルファミリー』が視聴者の心をつかむ理由 いい意味で“王道”の日曜劇場に
妻夫木聡主演で放送中の日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)が、真摯なつくりで視聴者の心をつかんでいる。11月2日放送の第4話では、“ファミリー”のひとりになるであろう、高杉真宙演じる騎手と、目黒蓮扮する謎の青年が登場予定。さらなる転機を迎えるその前に、第3話までを振り返りたい。
絶望の底にあった主人公に訪れた出会いを描いた第1話
早見和真の原作小説をドラマ化した本作は、競馬の世界を舞台に、2011年よりはじまる20年にわたる年月を見つめていく物語だ。昨年放送された日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』をはじめ、数々の名作を送り出してきた塚原あゆ子がメイン演出を務めるとあって、放送前から期待値が高かった。果たして、いい意味で“王道”の「日曜劇場」だと、これまで好評を得ている。
第1話は、主人公の栗須栄治(妻夫木聡)が新たな出会いを果たし、真にかけたいと思える人生のスタート位置についた。
最初に飛び込んできたのは、東京タワーの見える大手税理士事務所のオフィスで、生気を失った税理士・栄治の顔だった。「この1年の君の勤労意欲の低下には戸惑っている」と指摘される栄治。先に言ってしまうと、なぜ栄治の心がここにあらずなのかは、第1話ラストで明かされた。1年前、栄治は同じく税理士だった父を亡くしており、「裏切ってしまった」と絶望していたのだ。
そんな栄治が、人材派遣会社ロイヤルヒューマンの社長で、有馬記念優勝を狙う馬主の山王耕造(佐藤浩市)と出会い、ふたたび前を向き始める。当初、耕造の長男・優太郎(小泉孝太郎)からの依頼で競馬事業部の実態調査を行い、事業部撤廃のための報告をした栄治だったが、父が残した「人に感謝される仕事を」との言葉を思い出しながら、すべての領収書を精査。事業部の存続へとつなげた。職を失うも、耕造から「俺んとこに来るかい、クリス(栗須)」と誘われるのだった。
佐藤浩市のキャスティングが、かなりの力になっている。人前での罵倒もいとわぬ耕造は、カリスマ性のある人物ではあるが、特にこのご時世、視聴者から毛嫌いされる可能性もある。しかし佐藤が演じることで、情に厚く人間味あふれる魅力的な人物になった。「俺に馬の良し悪しはわからない。だからその馬の後ろにいる人間を見る」という言葉にも説得力がある。そんな耕造の厚みに、「社長は私にかけることができる」と正面からぶつかれる、栄治のまっすぐさを体現する妻夫木もやはり見事だ。