菅田将暉、竹内涼真ら、秋ドラマで存在感を放つ93年組 “イタい男”を魅力に変える凄み

 “嫌われ役”といえば、『もしがく』の菅田も同様だろう。これは三谷幸喜が脚本を手がける、1984年の渋谷を舞台とした青春群像劇だ。「八分坂」という架空の町にあるWS劇場に、久部三成(菅田将暉)という人物がやってきたことから物語ははじまった。いまは個性的な面々とともに劇場再建のため、W・シェイクスピアの『夏の夜の夢』を上演しようとしているところ。“三谷ワールド”炸裂である。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』©︎フジテレビ

 久部は非常に野心的で情熱的な男だ。かの蜷川幸雄に憧れ、自身の演劇観を守るためならば仲間たちとの衝突も辞さない。第1話の冒頭からものすごい形相で怒りながら自身の演劇論をまくしたて、灰皿を手に振りかぶった際には、さすがに多くの視聴者が引いたのではないだろうか。まさに彼が嫌われているのを目の当たりにした。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』©︎フジテレビ

 菅田は振り切れるほどの熱演に徹し、なかば強引に座長として『もしがく』を率いてきた。最初の頃はひとりだけ浮いていたものである。竹内の非常に軽快な妙演とは対照的な、お茶の間の私たちまでをも圧倒する熱演だ。しかし、彼のこの熱演に周囲の者たちも呼応するように、作品全体が熱を帯びてきた。いまでは頼もしさすら感じているのは私だけではないだろう。

 この秋ドラマにおける1993年生まれのふたりの俳優の共通点は、なかなかにイタい嫌われ役、というものが挙げられそうだ。けれどもすでにそれは過去の話で、彼らや周囲の者たちに変化が起きているし、一周回ってクセ(好き)になっている視聴者も少なくないだろう。どれくらい先のことまで見越して、彼らは演技プランなるものを立てていたのか。それは分からない。個々の持つ演技者としてのセンスによって生まれた演技スタイルなのか。ともあれ、相応の経験値がなければ実現はしないだろう。さすがは主演俳優としての器を持つふたりである。“嫌われ役”としてスタートしながら、私たちを魅了しているのだから。

 さて、この秋ドラマに出演している1993年生まれの俳優は、竹内と菅田だけではない。『もしがく』には神木隆之介もいるし、『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(日本テレビ系)で闇バイトの指示役を演じて新境地を開拓している志田未来も1993年生まれだ。それから、『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)で主演を務めている間宮祥太朗もそう。地上波ではないが、秋口に配信がはじまった『MISS KING / ミス・キング』(ABEMA)の主演・のんもそうである。また別の機会に、この者たちの活躍にもきちんと言及したい。そこには竹内と菅田とはまた別の、面白い共通点があるはずである。

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう

1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。

■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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