『フェイクマミー』が2025年に放送される大きな意義 TBSドラマは“働く女性”の代弁者に

 例えば、2024年7月期のドラマ『西園寺さんは家事をしない』は徹底して家事をしないかつアプリ制作会社でバリバリ働く38歳の独身女性の西園寺さん(松本若菜)が主人公。また、2025年4月期『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』では、専業主婦、働くママ、育休中のエリート官僚パパの子育ての模様にフォーカス。それぞれの価値観のもと、行われる“家事”を軸に物語が展開していった。

『対岸の家事』は自己責任論に疑問を投げかける 令和を生きる人に響いてほしい言葉の数々

『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)放送前の事前情報を見た段階で、「以前、似たようなテーマのドラマがあったな………

 特に印象的だったのは『対岸の家事』での江口のりこ演じる2児の母であり、もともと営業部でバリバリ働いていた長野礼子という役柄。「仕事も家事も両立させると言うのは、自分で選んだ道だから、諦めたくない」と毎日ボロボロになりながらもワンオペ状態で家事と育児に勤しみ、限界を超えようとしてしまう女性の姿を赤裸々に描いていた。

 そんな彼女の姿を見て私が思い出したのは、約10年前、筆者が社会人になったタイミング、ちょうど“育休”やら“ダイバーシティ”に各企業が力を入れていた時代のこと。

 就職活動中は、仕事も家事も両立させる女性に憧れていたものだが、いざ入社した会社ではフルタイム出勤をしている社員たちが、時短勤務の社員の皺寄せを食らって疲弊。それに気づいている育児による時短勤務を申請している女性社員は、毎日「ごめんなさい」「すみません」と帰っていくのが普通であった。これを見て筆者は「あれ? 就職説明会のときに感じたキラキラとした像は、どこへ? 誰も幸せそうじゃないな」と感じた。

 しかし、そこから数年、テレビドラマで描かれるママ社員は、みんなやはりキラキラとしていた。やはりあれは私のいた環境が特殊だったのか? そう考えたときに、登場したのが『対岸の家事』での長野礼子であったのだ。

 決してアンチ“ダイバーシティ”というわけではないが、まだスローガンばかりが立派で、誰も幸せになれていないと働く中で感じることが度々ある。このモヤモヤとした気持ちを表したのが、『フェイクマミー』での薫のモノローグで発せられた「誰かを押し上げるために別の誰かを犠牲にするような多様性」という言葉だった。

 これから薫と、これまた社会の中で人知れず窮屈な思いをしている茉海恵(川栄李奈)が、この多様性の時代とどう対峙していくのか。第2話以降が楽しみだ。

金曜ドラマ『フェイクマミー』

「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回大賞作をドラマ化。正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶ。

■放送情報
金曜ドラマ『フェイクマミー』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:波瑠、川栄李奈、向井康二(Snow Man)、中村蒼、野呂佳代、池村碧彩、橋本マナミ、中田クルミ、 津田篤宏(ダイアン)、筒井真理子、利重剛、若林時英、宮尾俊太郎、朝井大智、筧美和子、浅川梨奈、笠松将、田中みな実
脚本:園村三
演出:ジョンウンヒ、嶋田広野、宮﨑萌加
主題歌:ちゃんみな「i love you」(NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
プロデュース:韓哲、中西真央、唯野友歩
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fakemommy_tbs/
公式X(旧Twitter):@fake_mommy_tbs
公式Instagram:fake_mommy_tbs
公式TikTok:@fake_mommy_tbs

関連記事