『ばけばけ』髙石あかり×寛一郎の“オタクカップル”に胸キュン 松野家の新体制が微笑ましい

 貧しいながらも楽しい松野家に、新たな一員が加わった。トキ(髙石あかり)と銀二郎(寛一郎)の顔もほころぶ幸せな新婚生活が描写されたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第11話。だが、同時に早くも疲労感が伺える銀二郎の表情が胸騒ぎを残した。

 これまで一家が暮らしていた長屋で始まった2人の新婚生活。大人5人が集うと余計に狭さが際立つが、朝は全員で顔を突き合わせて食事をとる。妻になったトキは、フミ(池脇千鶴)と一緒に台所に立つようになった。銀二郎がトキの作ったしじみ汁を飲み、「あ~っ」と声を漏らせば、すかさず司之介(岡部たかし)から「あ〜っと言うな。はしたない!」と叱声が飛んでくる。早くも松野家に馴染んでいるようだ。

 トキと銀二郎は実に仲睦まじく、日の出の刻には大橋川で出雲大社の方角に手を合わせ、途中まで一緒に出勤する2人。後ろにいるサワ(円井わん)のことはそっちのけで、完全に自分たちだけの世界を確立している。トキは元武家の銀二郎に荷運びの仕事をさせるのは気が引けたが、当の本人はいつまでも武士にこだわる父親に嫌気が差していたため、ようやく解放されて嬉しそうだ。勘右衛門(小日向文世)も司之介も似たようなものだが、銀二郎は「松野家の跡取りとして、いずれはおじじ様、父上様のような立派な当主になりたい」と敬意を忘れない。

 そんな銀二郎にトキはホノ字で、彼に似た小豆洗いの絵を見ながら仕事に励む。まさに働き者の小豆洗い。しかも、無類の怪談好きだ。まさにトキにとっては理想の相手で、源助柱の伝説も知っている銀二郎に感激し、思わず拝む姿にはふふっと笑みがこぼれた。まるで、オタクカップルのようである。

 夜は銀二郎が語る鳥取の怪談話に聞き入るトキ。家主から家賃の代わりに布団を取り上げられ、身を寄せ合って亡くなった貧しい兄弟の物語は、のちに小泉八雲が妻・セツから語り聞かされたものを再話し、「鳥取のふとんの話」として発表する。「怪談は恐ろしくも寂しくて切ない」と考えている銀二郎の語りにはどこか愛があり、じんわりと胸に染み入った。寛一郎の優しい声色もまた、耳心地がいい。その余韻に浸ったまま、布団に入り込む生活はトキにとって幸せ以外の何物でもないだろう。

 1カ月後、借金取りの森山(岩谷健司)に稼ぎのほとんどを持っていかれた銀二郎は驚く。松野家にそこまで深刻な借金があることを知らなかったのだ。少々引き気味ながらも、「だったら仕事を増やしたほうがええですかね?」と申し出る銀二郎。その男気を買い、司之介は一緒に相撲を取る。本来なら余裕で勝てるのだろうが、司之介の顔を立ててわざと負けてあげる銀二郎はこの上なく、よくできた婿だ。

 だが、史実を知っていると呑気に銀二郎を褒め称えてばかりもいられない。少なくとも銀二郎はトキの生涯の伴侶ではないのだ。あまりに張り切りすぎな銀二郎の未来を暗示していたのが、雨清水家の長男・氏松(安田啓人)。傅(堤真一)から工場の後継者として一身に期待を背負っていた氏松だが、未曾有の不況に対処しきれず、置き手紙を残して出奔する。今思えば、弟の三之丞(板垣李光人)にやたらとつらく当たっていたのは重圧によるストレス発散だったのかもしれない。トキはまだ気づいていないようだが、銀二郎も少しずつ“うらめしポイント”を貯めているような気がする。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

関連記事