『コンフィデンスマン』日韓の最大の違いは? 韓国版が描いた“過去”の重み
Prime Videoで配信中のドラマ『コンフィデンスマンKR』。日本の同名ドラマを原作に、信用詐欺を働くコンフィデンスマンたちの痛快な暗躍を描くドラマだ。残すところあと4話となったが、勢いに乗ったまま最終回を迎えた『暴君のシェフ』との競争の影響もあってなのか、なかなか視聴率が上がられない中、放送時間帯を移すなど(※1)苦闘を強いられた面もあった。しかし実は目を引くところは少なくはない。
オリジナルである『コンフィデンスマンJP』(以下、JP版)は、ダー子(長澤まさみ)を中心に、リチャード(小日向文世)、ボクちゃん(東出昌大)の3人が様々な手口を使って悪徳な方法で巨万の富を築く輩から金を騙し取り破滅させていく。彼らは基本的には一般人に手を出さず(ただし第1話では脱税を働いた中小企業社長を騙していた)、ターゲットに店を潰されたり尊厳を奪われたりした人々に手に入れたお金を分配するなど義賊的な一面もあるため、ピカレスクロマンの体裁を取るドラマだった。
リメイクである『コンフィデンスマンKR』(以下、KR版)もまた、IQ165を誇るリーダーのユン・イラン(パク・ミニョン)、ジェームズ(パク・ヒスン)、ミョン・グホ(チュ・ジョンヒョク)の詐欺師3人組というスタイルを踏襲した。また導入となる第1話でギャンブル狂のムーダン(巫女)が賭博場で騙されるストーリーとなっているのをはじめ、ターゲットたちや懲らしめられる展開もJP版に寄せているエピソードが多い。
KR版のオリジナリティは、まず1エピソードを2話分で描いている点だ。これは韓国ドラマが土曜日・日曜日の2回放送であるがゆえだろうが、ジェームズを演じたパク・ヒスンが語っているように(※2)、1話完結のため悪役がやや戯画的な印象だったJP版から、KR版は2話に渡り「本当に悪人として罰を受ける存在」として描くことに重点を置いていることから、イランたちの義賊ぶりがやや強くなっている。
第3話〜第4話で登場するターゲット、悪徳美術評論家ユ・ミョンハンは、『私の夫と結婚して』でパク・ミニョンの夫ミンファン役だったイ・イギョンが演じており、イランに弄ばれる姿はコミカルではある。だが、才能ある画家志望の若者を監禁して贋作を描かせる卑怯な姿をきっちり描き、“ずるいけど憎めない”という逃げ口上を与えない。悪い奴はとことん悪く、だからこそきっちり詰められるような作りになっている。
ストーリー上のもうひとつ大きな差異としては、キャラクターのカラーの違いと各々の叙事の有無だ。「前作で演じたキャラクターにとても感情移入してしまって、実は心がとても疲れてしまったんです。なので、今回はもっとエネルギッシュで少しクレイジーで健康的なキャラクターを演じたい」と明かしていたイラン役のパク・ミニョンは、ダー子に扮した長澤まさみ以上に振り切った演技を見せている。
たしかに正統派の女優然としたパク・ミニョンは、『キム秘書は一体なぜ?』や『シティハンター』のように王道の恋愛ものもいいけれど、前作の『私の夫と結婚して』や今作のように一癖あるストーリーの方が一層躍動し、殻を打ち破った感がある。第1話で見せたホストのルックスが抜群に合っていた東出昌大演じるボクちゃんと比べて幼さの残るチュ・ジョンヒョク扮するグホは、よりかわいらしくなり3人のバランスに違うカラーを加えた。さらにリチャードとジェームズに至っては、小日向文世からパク・ヒスンへと実年齢が15歳ほど若返ったことで、飄々としたリチャードとエネルギッシュなジェームズという、かなり個性に差のあるキャラクターに仕上がった。このあたりにはどちらが良いというのではなく、両方楽しめるお得さがある。