『チェンソーマン』なぜ世界的ヒット作に? 衝撃を与えた“アンチ少年マンガ”の面白さ

 そもそも『チェンソーマン』は『レゼ篇』以前から、海外人気が高い作品として知られていた。

 アメリカの権威あるマンガ賞「ハーヴェイ賞」では、「ベストマンガ」部門を2021年から2023年まで3年連続で受賞。そして「NPD Bookscan」のデータをもとにしたランキングでは、『チェンソーマン』1巻が2022年にアメリカの書店でもっとも売れたマンガの第1位に輝いていた(※5)。

 そうした流れの背景としては、コロナ禍のロックダウンを境にアニメ・マンガの海外展開が一気に進んだことが挙げられる。とはいえ数ある作品のなかで『チェンソーマン』がとくに高い人気を獲得している以上、そこにはもっと別の理由が関わっているはずだ。

 それではどんな要素が、海外ファンの琴線をくすぐっているのだろうか。たとえばアメリカの掲示板型SNS「Reddit」では、誉め言葉として「少年マンガらしくない」「少年マンガのお約束を崩している」といった意見が飛び交っていることが印象的だ。

 同作では人の命が軽く、メインキャラクターですら簡単に退場していくことが大きな特徴。どれだけ危機的な状況になっても、主人公とその仲間たちだけはなぜか生き残る……といったご都合主義を指す「プロットアーマー」という言葉があるが、『チェンソーマン』ではそのお約束があっさりと覆されてしまう。

 また少年マンガの王道と言われる「友情」や「努力」の価値も、高く見積もられておらず、そうした価値観を蹂躙するような展開が次々と描かれる。恋愛描写すらも歪としか言いようのない扱いだ。そのため読者はつねに予想を裏切られ、“何が起こるか分からない”物語にのめり込んでいく……。ここまで自由で予想不可能な展開のマンガは珍しいため、国内外で多くのファンを獲得することになったのではないだろうか。

 なお、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は今後、10月22日のフランス公開を皮切りとして、アメリカやヨーロッパでの公開が行われる予定だ。これをきっかけとして、世界規模のムーブメントが巻き起こる可能性もあるかもしれない

参照
※1. https://sports.donga.com/ent/article/all/20250922/132434011/1
※2. https://www.kobis.or.kr/kobis/business/stat/boxs/findWeeklyBoxOfficeList.do
※3. https://www.setn.com/News.aspx?NewsID=1724959
※4. https://x.com/reissuerecords/status/1973240969895333932
※5. https://www.animenewsnetwork.com/news/2023-03-05/chainsaw-man-ranks-no.1-on-npd-bookscan-top-selling-manga-of-2022-list/.195600

■公開情報
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
全国公開中
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(マキマ)、ファイルーズあい(パワー)、高橋花林(東山コベニ)、花江夏樹(ビーム)、内田夕夜(暴力の魔人)、内田真礼(天使の悪魔)、高橋英則(副隊長)、赤羽根健治(野茂)、乃村健次(謎の男)、喜多村英梨(台風の悪魔)、上田麗奈(レゼ)
原作:藤本タツキ『チェンソーマン』(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:𠮷原達矢
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
副監督:中園真登
サブキャラクターデザイン:山﨑爽太、駿
メインアニメーター:庄一
アクションディレクター:重次創太
悪魔デザイン:松浦力、押山清高
衣装デザイン:山本彩
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
カラースクリプト:りく
3DCG ディレクター:渡辺大貴、玉井真広
撮影監督:伊藤哲平
編集:吉武将人
音楽:牛尾憲輔
配給:東宝
制作:MAPPA
主題歌:米津玄師「IRIS OUT」(Sony Music Labels Inc.)
エンディングテーマ:米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」(Sony Music Labels Inc.)
©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式X(旧Twitter):@CHAINSAWMAN_PR

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