『ばけばけ』最高のOP映像&サブタイトルはいかにして生まれた? CP&演出に狙いを聞く

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 オープニング映像では、ハンバート ハンバートが歌う「笑ったり転んだり」にのせて、トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)夫婦の日常を切り取った写真が次々と映し出される。ポスターと同じく写真家・川島小鳥が撮影を担当し、2人の自然な表情を捉えた。

 制作統括の橋爪國臣は「制作の都合上、どうしてもいろいろなことがバラバラになってしまうこともあるんですが、今回はポスターと同じ雰囲気でいきたいと、川島さんにお願いしました」と明かし、静止画ならではの魅力をこう語る。

「ハンバート ハンバートさんのドラマに寄り添った主題歌を生かすために、曲がじっくりと聴けるようなオープニングにしたいと思っていました。静止画は“一瞬”しか切り取っていませんが、実際に曲を聴きながら見るとその先が自然に想像できるというか、想像の余地がすごくある。ドラマの内容や主題歌をより深めていく、いい仕組みになるのではないかと感じています」(橋爪)

 コンセプトは、“結婚した2人がお散歩しながら過ごす一日”。撮影当日は丸一日かけて松江市内を5~6か所まわり、総カット数はポスター、タイトルバックを合わせて数千枚に上った。

「スタッフは見えないところに移動して、トミーさんと髙石さん、小鳥さんの3人だけの世界で自由に撮影してもらいました。小鳥さんは“一瞬”を捉える力が本当にすごくて、『渾身のセレクトです』と上がってきた220枚の写真、そのすべてが素晴らしいんです。そうした思いを受け取って作り上げたのがこのタイトルバックで、そこがみなさんにも伝わるといいなと思っています」(橋爪)

 半年続く物語の幕開けとなる第1週のタイトルは、「ブシノムスメ、ウラメシ」。これは第1回の冒頭でも描かれたヘブンの片言な日本語・通称“ヘブン言葉”を用いたもので、今後も同様のテイストで週タイトルが続いていく。

 橋爪は「実際の小泉八雲さんとセツさんは、日本語の語彙を使いながら英語の文法で喋っていて、息子たちも何を言っているのか聞き取れなかったと。実際にどんなことを喋っていたのかも文献に残っていますが、2人にしか通じない、2人だけの言葉はとても素敵で、ラブストーリーを描いていく上でキーになると思いました」と打ち明ける。

「ドラマでは、視聴者にも聞き取れる程度の片言な言葉にしていますが、すべてを言葉で表現できないからこそ、“間の感情”のようなものが伝わってくるんですよね。実はヒロインオーディションのときにもヘブン言葉で会話してもらいましたが、セリフとして書いていないところまですごく伝わってきたんです。普通に喋るよりもいいシーンになったと手応えを感じて、この言葉は大切にしたいと思いながら進めていきました。サブタイトルでも、2人の物語をヘブン言葉でかわいらしく伝えていけたらいいなと思っています」(橋爪)

 また、演出の村橋直樹は「ヘブン言葉がサブタイトルに適していると感じるのは、こちらがちょっと探りたくなるから。言葉が完璧じゃないので、視聴者のみなさんの中にも“言い切られていない感じ”が残って、その意味を探っていきたくなると思うんです」と説明。「多義的にも聞こえるので、回によっては人それぞれ違う意味で受け取れたりもする。そういったところも狙っています」と付け加えた。

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