台湾の現在を映すドキュメンタリー 空族新作『潜行一千里 ILHA FORMOSA』11月22日公開

 富田克也が監督を務めた空族最新作『潜行一千里 ILHA FORMOSA(イラ・フォルモサ)』が、11月22日よりK’s cinemaほかで全国ロードショーされることが決定した。

 本作は、“麗しの島”台湾の現在を捉えたドキュメンタリー。『サウダーヂ』『バンコクナイツ』などを手がけてきた映像制作集団「空族」の映画の最大の特色は、徹底したリサーチにある。映画の舞台となる場所を、とにかく歩きそこに住む人々と交流を深める。そして、現地の人々、歴史、現在を知るところから映画が始まる。『バンコクナイツ』ではタイ、ラオスで撮影されたが、新作映画(2026年撮影予定)の舞台となるのは台湾。2020年以降、コロナ渦の最中に空族は台湾に幾たびも飛びリサーチを続けてきた。本作では、そのリサーチの過程が記録されている。

 ストリートに流れる音楽に導かれるように、彼らは台湾原住民たちの住む村に向かってい く。アミ族の住む花蓮県タパロン部落。そこから3000メートル級の中央山脈を越えて辿り着いたセデック族の部落。そして台湾の最南端に位置するパイワン族の村まで。失われつつある原住民の言葉でラップし始める若者たち、原住民の伝統音楽を現代にアップデートして新しい音を生み出そうとするアーティストたち。空族は旅の過程で出会った人々と交流を深めながら、日本も含めた様々な国からの侵略の歴史をも知ることになる。しかし、過去の歴史をはねのけるように人々は活き活きと踊り、歌い、笑う。フィナーレは毎年タパロンで行われるアミ族最大の豊年祭だ。艶やかな原住民の衣装を纏った人々は三日三晩踊り続ける。台湾の過去と現在、そして未来。時空を超え、観客はその祝祭に身を委ねる。

 あわせて台湾の風景を切り取った場面写真も公開。また、監督を務めた富田と監督補を務めた相澤虎之助からコメントも到着した。なお、公開期間中は空族特集も予定されている。

空族(富田克也・相澤虎之助)コメント

台湾と言えば私たちには一般的に大陸との緊張関係に常にさらされている“もうひとつの中国”という中華圏のイメージが強いのですが、 原住民の部落に入るとそこにはかつてはオランダ、次に中国大陸、そして日本も含めて数々の強国からの植民地政策を経て、逆にそれら の異文化を取り入れながらも自らの部族とアイデンティティを守り続けている現在の原住民の人々がいました。その原色に彩られた姿は 私たちの持っていた中華圏である台湾のイメージを一新し、西洋と東洋の様々な文化の異なる移民たちと、もともと住んでいた原住民たちが長い時間をかけて共に台湾という小さな島でお互いに“共和”の道を模索し歩んでいる姿が浮かび上がってきたのです。
このドキュメンタリーの中で台湾のラッパー、大支(ダーギー)が「台湾の特徴とはさまざまな文化や音楽が融合するところ。そう、メルティングポットなんだ」と語っていますが、特に2020年代から原住民の若者たちが自分たちのルーツミュージックを様々なジャンルの音楽とミックスさせて台湾独自の新しい音楽を創り出しています。そこから何が生まれ出づるのか? まさにこの現在進行形の台湾の姿を観ることはグローバル化、移民の時代を生きる私たち日本人にとっても大きなヒントになることだと考えています。

■公開情報
『潜行一千里 ILHA FORMOSA』
11月22日(土)新宿K’s cinemaほか全国ロードショー
監督:富田克也
監督補:相澤虎之助
撮影:スタジオ石
録音:中村誠治
整音:山﨑巌、中村誠治
ドライバー:田中隆ノ介
カラーグレーディング:古屋卓麿
編集:富田克也、向山正洋
エクゼクティブ・プロデューサー:石崎尚
プロデューサー:Vincent Wang、筒井龍平
制作進行:蔡信弘、大野敦子、岩井秀世
企画:愛知芸術文化センター
製作:愛知県美術館
制作・配給:空族
共同制作:札幌文化芸術交流センター、SCARTS
2025年/79分/16:9/5.1ch
©kuzoku

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