河合優実、原菜乃華に“3人の母”も 『あんぱん』を彩った女性キャストたち
江口のりこ×松嶋菜々子×戸田菜穂、三者三様の母の愛
そして忘れてはならないのが、のぶの母の羽多子(江口のりこ)と嵩の母、登美子(松嶋菜々子)と千代子(戸田菜穂)だ。
羽多子は、夫の結太郎(加瀬亮)が急死してしまうという困難に見舞われるも取り乱さず、気丈かつ明るく振る舞う。朝田家では嫁として控えめでありながら娘たちに好きなこと、やりたいことが見つかればその道に進めるように応援し支えている。そのため、『あんぱん』では、教師になりたいと釜次に宣言するも反対されてしまったのぶに賛同する場面や蘭子と豪が最後の夜にともに過ごせるように着替えを持たせるなど、思わず「羽多子さん、グッジョブ!」と言ってしまうような場面が端々に見られた。いつも後ろから見守り、大きな愛で包んでくれる羽多子の存在があったからこそ、のぶは何事にも果敢に挑戦することができたのではないだろうか。
幼少期からのぶと嵩の人生をかき回すような存在だった登美子は、自分がどう思うか、どうしたいかを軸に行動できる人だったということもできるが、現代以上に「女性とはこうあるべき」という考えが広まっていたのぶたちの時代の中ではかなり異質だった。幼少期から青年期にかけてののぶと嵩は、予想と異なる受け答えをしてくる登美子に傷つき、辟易していたようだが、大人になるにつれ、登美子の“扱い方”も手慣れてくるように。「アンパンマン」の絵本ができ、手に取った登美子は「全くダメね!」とダメなところをつらつらと語るなどいつまでも“そのまま”だったが、晩年は逆にそれがチャーミングさにも繋がっていた。
千代子は嵩の育ての母で、嵩の人格は寛(竹野内豊)と千代子夫妻によって形作られたと言っても過言ではないだろう。養子である嵩と千尋を心から愛した千代子は、好きなときに表れ、息子たちの将来に意見していく登美子とぶつかることもあった。突然、登美子が柳井家に出戻ってきたため、「いつまで、いらっしゃるがですか?」と静かに火花を散らしあった千代子 vs 登美子の茶室での戦いは忘れることができない。
特に登美子を中心にギクシャクすることもあった3人だが、のぶと嵩が中目黒の長屋に引っ越したときは久しぶりに集いあい、仲の良い様子を見せていた。第127話では、羽多子を中央に、左に千代子、右に登美子が並ぶ白黒写真を見つめながら、メイコが「向こうで、お母ちゃんと3人仲良くしゆうろうか」と発言したことで3人が鬼籍に入ったことが知らされた。きっとわいわいしながらのぶと嵩を見守ってくれている事だろう。
のぶや嵩だけではなく、蘭子やメイコを含めた登場人物たち、それぞれの物語のラストを私たちもあたたかく見つめていきたい。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK