2025年夏アニメ、“ガチ勢”がリアタイしていた傑作&怪作4選 部活もの・日常系の最新系
先が読めない謎の迫力『Turkey!』
オリジナルアニメ『Turkey!』が話題を呼んでいる。
長野県を舞台に女子ボウリング部5人の活動を描く作品として売り出された本作は、第1話で視聴者の度肝を抜いた。
本作の第1話では、「部活は遊びか本気か」を問いかけ、一人だけやる気のある部員がいる高校の部活動という、「〇〇は遊びじゃない」的な構図を短い尺で提示した。しかしその手際もさることながら、話題になったのはラストの衝撃的な展開だ。
なんと主人公たち5人が、戦国時代にタイムスリップするのである。
奇想天外で荒唐無稽な『Turkey!』の裏切りは、視聴者から様々な声を呼んだ。ボウリング×戦国という見たことのない掛け算に期待する声から、部活ものファンの真面目にボウリングをやってほしいと残念がる声まで、放送後は賛否両論であった。
しかし出オチかのように思われた本作が話題になったのは第1話だけではない。
ボウリングのスプリット(1投目の後左右にピンが独立して残ってしまうこと)と様々な二者択一の問題を重ねる大胆な脚本により「どちらかが死ななければならない」といった重い問いを打ち出すなど、従来の部活モノとのギャップやとんでもない飛躍によるシュールさから話題と笑いを呼ぶことに成功した。
戦国時代では命も結婚も夢も違う意味を持つ。価値観の違いから生まれる摩擦を通し、ボウリング部の5人の現代では向き合いきれなかった悩みをアクロバティックに描き抜いた本作は、トンチキとして笑って受け入れられると同時にストーリーの面でも視聴者の心を掴んだ。
部活ものと戦国時代の相反する二つを接続することにより生まれた『Turkey!』のダイナミズムは、ときに上滑りした力業に思われるものの絶えず視聴者に驚きを与え続けた。
アカペラ部の青春! 『うたごえはミルフィーユ』
『うたごえはミルフィーユ』はそんな破天荒な『Turkey!』とは対照的に、丁寧に部活ものを描いている。本気でやりたい人と皆で楽しくやりたい人との摩擦を、『Turkey!』が結果的にデコイのように扱ったのに対し本作は主題の一つとして正面から向き合う。
主人公がアカペラと出会い、アカペラをやるための仲間を部活に集め、楽しくなったのも束の間、スタンスや実力の違いから摩擦が生まれ気持ちがバラバラになり……といった、王道を一つ一つ歩んでいく。飛び道具の意外性で笑いと驚きをもたらす『Turkey!』とは真反対の作品だ。『Turkey!』の脚本の蛭田直美はドラマ版で、『うたミル』総監督の佐藤卓哉はアニメ版で、それぞれ『舟を編む』の脚本を担当しているなどの共通点もあり、放送前は同系統の部活モノ作品になることが予測されたが、『Turkey!』があらぬ方向に進み『うたミル』の誠実さが強調されることとなった。
ただ王道は陳腐と紙一重であり、決して簡単なものではない。『うたミル』が名作になりえたのは、アカペラという、他者を前提とした人間ドラマとの親和性が高いモチーフを巧みに活かし、部員たちの等身大のコンプレックスが持つ切実さを描いたからだろう。価値観や方向性の違いがありながらもアカペラの演奏において一つに調和するカタルシスは非常に大きい。物語の随所に見られる対比構図がアカペラでの調和への布石としても作用し、作品に深みをもたらしている。
また、プロ志向のアカペラバンドParabolaの存在も、思い出としてのアカペラ部活動を行う主人公たちのスタンスをより際立たせている。
丁寧に構成された物語からはキャラクターの息づかいが感じられ、部活ものが飽和気味の2025年においても十分通用する作品であった。
そして秋クールへ
夏クールも終わりが近づき、秋クールが始まろうとしている。
大半のアニメは赤字だと言われている世界であり、大ヒット作以外は忘れられていく。来月には秋アニメが覇権争いを始め、ほとんどの夏アニメは話題にのぼることもなくなるだろう。放送時期という旬を逃してしまえば、良作であっても大抵観る機会は失われてしまう。もし、今回紹介した作品の中に気になる作品があれば、一期一会だと思ってチェックしてもらえれば幸いだ。