『エイリアン:アース』第5話はノア・ホーリーの“本気回 一気に視点が変わる“どんでん返し”
“目玉モンスター”とゼノモーフの対決!?
さて、ドミノ倒しのように船内で事態が悪化していく中、ついにモローは裏切り者のペトロヴィッチ(エンゾ・シレンティ)を追い詰める。しかし、彼はゼノモーフに殺されてしまった。そこで彼の死体に近寄るのは、あの“目玉モンスター”ことT.オセルス。その後、ザヴェリがゼノモーフに襲われるのだが、なんとT.オセルスは乗組員に寄生。その体を使ってゼノモーフにコミュニケーションを取ろうとするのも束の間、ゼノモーフにまたがり、戦い出すのだ!
実はT.オセルス、自分を観察していたチブゾ(人間)のことを逆に常に観察しており、“寄生虫入りサンドイッチ”を食べそうになったときもガラスを叩いて危険を知らせるような動きをとっていた。そして今回はザヴェリを助けるかのように、ゼノモーフに立ち向かう。第4話でこの生命体が高い知能を持っていることが明かされているがゆえに、T.オセルスの真意が気になって仕方ない。登場時から只者ではない雰囲気を持っていたが、やはり只者ではなかった。むしろ『エイリアン:アース』の面白さを牽引しているのは、このT.オセルスとモローというキャラクターと言っても過言ではないのかもしれない。
復讐者モローの物語だった?
只者ではないといえば、モローもやはり作品の中でかなり重要な立ち位置にいそうな気配を第1話から漂わせていたが、それが第5話で確信に変わる。スライトリー(アダーシュ・ゴーラヴ)に気を許させるために子供がいると伝えたり、自分の名前を教えたりしていたモローだが、それが嘘ではなく実際に娘がいたこと、本名がクミ・モローであることが明かされるのだ。
娘のエステルはモローがミッションで宇宙に行っている間に、19歳の若さで火事に巻き込まれ死亡していた。娘からの手紙や浜辺の回想シーンから、最後に会ったのは彼女がまだ幼い頃だった頃がわかる。ここで、はじめてモローの“人間性”が垣間見えるのだ。それだけではない。火事を起こした裏切り者のペトロヴィッチが、実はボーイ・カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)の内通者で、彼(プロディジー社)の指示でもともとウェイランド・ユタニ社のミッションを妨害、そして標本を奪う算段だったことが判明したのだ。そのせいで、クルーのみんなは死んでしまった。
ペトロヴィッチとの銃撃戦で、モローの印象的な動作がある。巻き込まれた乗組員を助けようとするのだ。しかし、彼の頭をペトロヴィッチが撃ったことで、目の前で仲間が死んでしまう。最後、第1話に重なるようにマザーとの通信室で緊急退避庫に身を隠す。おそらく一人しか入れないため、ザヴェリを助けることはできなかったのだろう。娘と過ごした砂浜の記憶を胸に、彼は間一髪で身を隠す。エイリアンに垂らされた唾液を拭く仕草と涙を拭く仕草を重ねたラストは、なんとも印象深いシーンだ。
地球で墜落した後、ユタニ社に向かった彼が望むことは、これらの事態を生み出したカヴァリエを殺すことだった。スライトリーを納得させるかのように「自分のものだったものを返してもらうだけ」と言っていたが、実は本当にその通りで、この物語のヴィランがモローではなくカヴァリエであることが見えてくるのだ。むしろモローは、カヴァリエの策略で失った仲間や、娘の最期を看取ることもできないで挑んだ任務を水の泡にさせられたことに対し、怒っている。
ラストショット、彼が忌まわしそうにユタニの高層ビルの上から世界を睨みつける。そこで流れるスマッシング・パンプキンズの「Cherub Rock」という曲は、バンドの中心人物であるビリー・コーガンが、インディーズロックが商業化されつつあった当時の音楽業界をテーマに歌ったと言われている曲だ。
「甘い蜜を吸うのは誰だ? 金の匂いがするときだけやってきては、甘い蜜を吸おうとするのは誰だ?」
そんな歌詞が、モローのカヴァリエに対する想いに重なる。5大企業に統治される世界観がここにきて色濃くなり、物語はウェンディたちハイブリッドが地球にやってきたゼノモーフをどうにかする話ではなく、孤独な戦士モローによる復讐劇として一気に視点が変わるのだった。
■配信情報
『エイリアン:アース』
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:シドニー・チャンドラー、アレックス・ロウザー、ティモシー・オリファント、エッシー・デイヴィス、サミュエル・ブレンキン、バボー・シーセイ、デヴィッド・リズダール、エイドリアン・エドモンドソン、アダーシュ・ゴーラヴ、ジョナサン・アジャイ、イラーナ・ジェームズ、リリー・ニューマーク、ディエム・カミラ、モー・バーエル
クリエイター:ノア・ホーリー
製作総指揮:リドリー・スコット、デイビッド・ツッカー、ジョセフ・イベルティ、ダナ・ゴンザレス、クレイトン・クルーガー
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