『愛の、がっこう。』ラウールの笑顔の仮面が切ない カヲルの“黒い染み”を拭う愛実の思い

 自分の心を黒く染める人もいれば、また綺麗に洗い流そうとしてくれる人もいる。そのせめぎ合いが描かれた『愛の、がっこう』(フジテレビ系)第3話。

 愛実(木村文乃)とカヲル(ラウール)の秘密の授業が始まった。幼い頃、ほとんど学校に通っていなかったカヲルに読み書きを教える。たったそれだけのことが愛実に良い影響をもたらしていく。

 少しでもやる気になってもらうためにカヲルが好きな鉄道の本を教材に使ったり、学習障害の研究をしていた同僚の佐倉(味方良介)に読み書きが苦手な人への指導法についてアドバイスをもらったり、愛実はいつになく張り切っていた。

 自分の過ちが原因で出版社を追われ、教職に就いた愛実。だが、真面目にやればやるほど生徒の心は離れていき、落ちこぼれ教師の烙印を押された愛実は、なんだかんだ言いながらも授業に向き合ってくれて、シャープペンシル一本で言葉を失うほど喜んでくれるカヲルの素直さに救われるのだろう。

 初めて教える喜びを味わっただけではなく、生徒への関わり方にも変化が現れる。ホストと積極的に関わるなど、今までの自分ではあり得なかったことを試みて、良い意味でタガが外れたのか。愛実は進路決定を前にした生徒たちに自分の失敗談を打ち明けた。いつも正しいことしか言わない彼女にも後悔があることを知って、生徒たちの心も少し動いたように見える。

 浮かれ気分でいつもの屋上に向かった愛実だが、カヲルは約束の宿題に一切手をつけていなかった。彼の宿題は、あくまでもナンバーワンホストになること。カヲルからホストクラブに誘われたことで愛実は激怒し、2人は決別する。

 愛実がショックだったのは、カヲルが最初からホストクラブに誘い込むことが目的で自分の授業を受けていたという事実でも、「つまんねぇ女」と言われたことでもない。今まで教育の機会に恵まれなかった“可哀想”なホストに教師らしいことをして良い気分になりたかった。そんな自分のエゴを無意識のうちにカヲルに押し付けていたことだ。

 「所詮、ホストとは住む違う」という夏希(早坂美海)の言葉に胸を痛めておきながら、カヲルとの間に一線を引いていたのは他でもない自分自身だった。

 一方で、カヲルにも彼なりの葛藤がある。生まれつき読み書きが苦手なカヲルに周囲の人間は「バカ」というレッテルを貼り、誰も本気で向き合おうとしてこなかった。そんな中で愛実だけは何度失敗しても諦めず根気強く向き合ってくれたカヲルは嬉しかったに違いない。シャープペンシルだって、何かを与えるばかりで与えられてこなかったカヲルにとって初めてのプレゼントだった。子供のように目を輝かせる、その表情だけはきっと本物だ。

 でも、それくらいでは長年カヲルの心を蝕んできた黒い染みは晴れない。愛実を突き放したのも“作戦”と口では言いつつも、本音では怖いからだろう。今は頑張ってくれている愛実も、いずれ自分に愛想を尽かして見捨てるーーそう思っているのだ。

 それでも、どこかで人を信じたい気持ちがあるのではないだろうか。喧嘩の後にカヲルから愛実に送られてきた手紙。そこに書かれていた文字には、カヲルの一縷の望みが現れているような気がした。

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