森七菜の芝居はなぜ“存在感”があるのか 『国宝』『フロントライン』で示した唯一無二の魅力

 森が出演しているもう1つの作品が、関根光才監督作『フロントライン』。本作は、日本で初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」を舞台にした、事実に基づく物語だ。主要キャストとして、災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)の指揮官・結城英晴役の小栗旬をはじめ、厚生労働省から派遣された役人・立松信貴役の松坂桃李、DMAT隊員・真田春人役の池松壮亮、さらに結城(小栗旬)と旧知の仲でありDMATの立ち上げに尽力した仙道行義役に窪塚洋介が名を連ねる。さらに、光石研や滝藤賢一など脇を固める俳優陣も実力者揃いだ。

『フロントライン』©2025「フロントライン」製作委員会

 森が演じたのは、クルーズ船のフロントデスクで働く羽鳥寛子。外国人乗客と日本人医師たちの橋渡し的役目をこなすため、劇中では流暢な英語も披露している。羽鳥(森七菜)は自分も感染のリスクが高い状況下でありながら、言葉が通じず孤立してしまった外国人乗客に寄り添い、DMATの仙道(窪塚洋介)にも物怖じせずに意見するなど正義感が強い。物語中盤で陽性者しか船から降ろすことができなかった方針が変わったのは、羽鳥の言動がきっかけだったとも言える。本作は船内を走る羽鳥の後ろ姿から物語が始まる。息を切らして立ち止まり、マスクをずらして船外を見渡す羽鳥。これから起こる出来事に不安を感じつつも、どこか妙な落ち着きのある表情は、観る側の不安と期待を表しているかのようにも思えた。

2023年は森七菜の時代になる 月9初主演『真夏のシンデレラ』で演技の価値観を覆すか

この2023年は、俳優・森七菜の時代になる。そうだ、思い切って言ってしまおう。彼女こそがこれからの時代をつくる俳優なのではないか…

 それにしても、芯のある女性をあんなにも魅力的に演じられるのは、森本人の素質なのだろうか。両作ともに男性の出演者が多いなかで、小柄な森から放たれる柔らかな雰囲気とその演技力は一際際立っていた。『国宝』の高畑充希や見上愛、『フロントライン』の桜井ユキら、その誰とも違うあの独特な佇まいは唯一無二だった。きっと2025年の映画賞で助演女優賞に「森七菜」の名が上がるだろう。また、つい先日、10月公開の奥山由之監督作『秒速5センチメートル』への出演が発表された(※)。原作はあの新海誠。ますます森から目が離せなくなりそうだ。

参照
https://realsound.jp/movie/2025/07/post-2080565.html

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