白石麻衣、『最後の鑑定人』に繋がる演技の現在地 今こそ観直したい過去作5選
『嘘喰い』
2022年の映画『嘘喰い』で、白石が挑んだのは、鞍馬組の女組長・鞍馬蘭子という冷酷さを極めた役だった。闇カジノを仕切る暴力団のボスという設定は、乃木坂時代の清楚なイメージとは最も遠い位置にある。特に印象的だったのは、声の使い方だ。セリフを荒々しく張り上げるのではなく、むしろ低く抑え、吐き捨てるように言葉を投げることで静かな威圧感を作り出した。
相手を睨むだけで場を支配する芝居は、過去作で積み重ねてきた演技の引き出しが活かされている場面だ。冷酷さを突き詰めながらも、一瞬だけ孤独や緊張がにじむ微かな間を残したことで、蘭子は単なる極悪キャラクターにとどまらなかった。結果的に蘭子を主役に据えたスピンオフが制作されたこと自体が、役としての強度と、その奥に潜む人間的な余白が観客を惹きつけた証拠と言えるだろう。
『ミステリと言う勿れ』
2022年の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)も忘れがたい。白石が演じた犬堂愛珠は、物語開始時にはすでに亡くなっている人物だ。限られた回想シーンの中で、登場人物の動機を支配するだけの説得力を残すには、言葉で多くを語ることができない。白石が見せたのは、病弱な少女の儚さをそのままにせず、かすかな目の力や声の芯で生前の強さを残すことだった。監督からは「気が強いポジティブな女性を意識してください」と演出を受けたとされるが、表情を完全に落とさずに笑顔の奥にある葛藤を残したことで、愛珠という存在は単なる被害者ではなく、物語を進める原動力として存在していたように思う(※)。
制服姿に込めた矜持、強がりの奥に残した脆さ、清楚なイメージを裏切る毒舌、冷酷な女組長の低い声、わずかな目の力で示す物語の核。白石が積み上げてきた演技の引き出しは、『最後の鑑定人』でも活きてくるだろう。果たして、どんな演技を見せてくれるのか。再び、白石麻衣という俳優の“今”を更新してくれるはずだ。
参照
※ https://www.fujitv.co.jp/mystery/interview/interview09.html
■放送情報
『最後の鑑定人』
フジテレビ系にて、7月9日(水)スタート 毎週水曜22:00~22:54放送
※初回15分拡大(22:00~23:09放送)
出演:藤木直人、白石麻衣、迫田孝也、中沢元紀、阿部亮平、栗原類、松雪泰子ほか
原作:岩井圭也
脚本:及川拓郎、山崎太基、北浦勝大、青塚美穂
主題歌:矢沢永吉「真実」(Z+MUSIC/UNIVERSAL SIGMA)
音楽:橘麻美
演出:水田成英(FCC)、谷村政樹、清矢明子
プロデューサー:石原未菜、宮木正悟、郷田悠(FCC)
プロデュース協力:渡辺良介(大映テレビ)
制作協力:FCC
制作著作:フジテレビ
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