長岡花火をなぜ映画館で上映? ライブビューイングの演出担当が語る“迫力”と“祈り”

 日本三大花火の一つ「長岡まつり大花火大会」のライブビューイングが、全国の映画館で開催される。

 本ライブビューイングは2024年にも開催され、映画館の大画面と迫力の音響によって、テレビ中継とは一味違う花火の魅力を体感できるものとして好評を博した。

 長岡まつり大花火大会は、太平洋戦争末期の長岡空襲の慰霊、そして2004年新潟県中越地震からの復興祈願、そして平和の祈りを込めて打ち上げられている。2025年は戦後80年、そして中越地震の復興を祈願した「復興祈願花火フェニックス(以下、フェニックス)」打ち上げ開始から20年目という節目の年となる。長岡の花火は迫力だけではない、そんな背後に背負うストーリーが見る者の心を震わせる。

 そんな花火大会のライブビューイングの演出を担当するのは、テレビ新潟時代から長く長岡の花火を見てきた坂上明和氏だ。ライブビューイング開催前に、映画館で花火大会を見る醍醐味、そして長岡花火に対する思いを語ってもらった。

花火大会の魅力はテレビでは伝えきれない

――坂上監督は、いつ頃から「長岡まつり大花火大会」に関わっていらっしゃるんですか?

坂上明和(以下、坂上):私はかつてテレビ新潟というローカル局に所属しておりまして、2001年から2010年まで長岡支社に勤務していました。2004年に中越地震を経験し、翌年には復興祈願としてフェニックスという花火が打ちあがるようになっていく過程を見ており、それ以来、様々な形で関わるようになってきました。

――2024年には、長岡花火のドキュメンタリー映画『長岡大花火 打ち上げ、開始でございます』も制作・公開されていますね。

坂上:はい。昨年は中越地震から20年の節目の年でしたので、映画業界の知人と花火のドキュメンタリー映画を作ったら面白いんじゃないかという話になったんです。

坂上明和

――今回はドキュメンタリーではなくライブビューイングを、しかも映画館で展開するわけですが、映画館で花火大会を鑑賞する醍醐味というものを坂上監督はどうお考えでしょうか?

坂上:昨年のドキュメンタリーも、テレビ番組として制作・放送することもできたんです。でも、やっぱり花火の迫力はテレビでは伝えきれない。映画館の大画面と音響によって、初めて花火の良さを体感できると思うんです。なんといっても音響が重要です。花火の音ってすごいんですよ。空気が震えるんです。この感覚はテレビでは味わえません。それに、テレビの場合、花火の大きさはどれも一緒になりがちです。3尺でも5号玉でも、アップにすればほとんど同じですよね。かといって、引いた画にするとテレビでは迫力が出ません。実は、花火はテレビで伝えるのが難しいコンテンツなんです。

――画面の大きさとともに、音響が花火の真の魅力を伝えるわけですね。

坂上:はい。テレビとは全然別物に見えてきます。あと映画館は暗いですから、会場の夜闇と劇場内が一体になるので没入感も段違いです。

――映画館でのライブビューイングは、テレビ向けの中継演出とは異なるのですか?

坂上:そうですね。テレビの花火大会中継はアナウンサーが司会進行し、タレントがトークをする形式が多いですが、ライブビューイングでは一切MCは入れず現場の音だけで構成しています。会場のノイズや観客の歓声、会場に流れるアナウンス、そうしたものを聞いていただいて、長岡の会場にいるかのような雰囲気を味わっていただきたいと思っています。それと、長年長岡の花火を見てきた経験から、我々の考える最高のポジションにカメラを設置します。映画館では涼しい環境で最高のポジションと最高の音響で花火をご覧いただけます。

――ライブビューイングは昨年に続いての開催ですが、昨年はどんな評判だったのでしょうか?

坂上:自宅で見る花火中継とは全然違うと評判になりました。映画館のスピーカーはやっぱりすごいですね。会場のざわざわとした音も含めて臨場感が良かったと言ってくださる方もいて、テレビでは聞こえないような環境音も聞こえてくるんです。本当は、花火を生で見るのが一番いいんです。しかし昨今、長岡花火大会の人気が非常に高く、なかなかチケットが取れません。かといって会場には限りがありますから、これ以上は集客できないんです。少しでも長岡花火を良い環境で見たいという方のためにも、映画館で展開することは非常に大きな意義があると思っています。

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