小川彩、五百城茉央、井上和、菅原咲月が躍進 乃木坂46 5期生が春ドラマで見せた可能性
2025年の春ドラマは、乃木坂46の歴史において、特に5期生にとって画期的な転換点として記憶されるだろう。小川彩、五百城茉央、井上和、そして菅原咲月という、次代を担う4人のメンバーが、それぞれ異なる地上波ドラマの主要な役どころで活躍している。
注目すべきは、出演作品のジャンルと役柄の幅広さだ。小川はフジテレビ木曜劇場枠で芳根京子演じるヒロインの妹を演じ、五百城は深夜帯のミステリードラマで主演を務めた。井上は文学性の高いスペシャルドラマでヒロインを担当し、菅原は物語全体を貫く“故人”という特殊な立場で登場。放送枠や演出方針、視聴ターゲットがすべて異なるなかで、彼女たちは各々の役割を全うし、確かな印象を残した。
これは、乃木坂46が長年築いてきた「演技のできるアイドル」像の新たな証明でもある。西野七瀬、齋藤飛鳥、山下美月、遠藤さくらといった先輩たちの系譜を継ぎつつ、5期生はさらに早い段階から女優業に本格的に踏み出した。ここでは、その中心となった小川彩、そして挑戦的な姿勢が際立った五百城の取り組みを軸に、各メンバーの躍進を読み解いていきたい。
小川彩
小川の出演作『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)で彼女が演じた関谷ふゆ子は、昭和11年を舞台にした物語における四姉妹の末っ子。快活で愛らしい性格と、時に見せる反抗心のバランスが魅力のキャラクターであり、小川自身の持つイメージと高い親和性を示した。特に姉の恋人にアイスをねだる場面は「あざとかわいい」として話題になった。演技についても高評価が寄せられており、アイドルとしての“愛嬌”を、演技の中でどう見せるかという問いに対して、小川はすでに明確な答えを持っているような気がしているのだ。
本人もインタビューで「アイドル活動で学んだ『見せ方』を、演技でも活かしたい」と語っており、無意識の表現ではなく、技術としてのパフォーマンスであることがうかがえる(※)。17歳にしてゴールデン枠での抜擢、そして堂々たる結果を残した小川は、今後の展開次第では、朝ドラや学園ドラマといった新たな舞台での起用も十分に期待されるだろう。
五百城茉央
五百城が主演を務めた『MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です』(カンテレ・フジテレビ系)は、深夜帯で放送されたサイコスリラー。物語は学園を舞台にした連続殺人事件を軸に展開し、彼女が演じるキャラクターは視聴者の想像を何度も裏切る存在だった。ドラマ中盤までは、五百城は天才的な犯人・茜を演じているように見えた。しかし最終話目前で彼女が演じていたのは茜に憧れる凡庸な同級生・依原であることが明かされる。演じる人物が別の人物を演じるという二重構造の演技はかなり難易度が高いが、演じる人物の未熟さや模倣性を、あえて演技に滲ませるという難役を担いながら、作品全体の構造を成立させた点において、五百城の存在感は圧倒的だったと言える。
これまで“癒し系”のイメージが強かった彼女にとって、『MADDER』での挑戦は、役者としての新たな側面を世間に示す機会となった。今後、サスペンスや心理劇といった作品でのオファーが続く可能性もあるだろう。
乃木坂46・5期生の演技活動が多方面に広がるなかでも、とりわけ注目を集めたのが井上と菅原の地上波ドラマ出演だった。