長澤まさみの“七変化”が素晴らしい! 『ドールハウス』はガチンコのホラー映画だ
そんな鉄壁のリアクション陣がいるからこそ、矢口史靖監督のホラー演出も冴え渡っている。コメディのイメージが強い矢口監督だが、今回は完全にホラーに全振りだ。あらすじでも書いた通り、本作の前半で描かれる恐怖は、これまで映画、ドラマ、小説……etc、様々な媒体で描かれてきたシチュエーション、「捨てたはずの人形が、なぜか家に帰ってくる」である。これがまぁ、アイデア満載! 「あっちゃ~」系の嫌なシーンや、ゴミ清掃員の人が思い切った不幸な目に遭うショック描写など、人体損壊や出血量こそ少ないが、どれも非常にインパクトがある。中盤から映画のギアは上がりっぱなしで、ド直球・ド真ん中のビックリ演出も堂々解禁! 予告編で出ていた「呪われた人形をCTスキャンにかけよう!」という、ギャグにしか思えなかったシーンも、一切のギャグなしで、何なら劇中でも屈指の「うわぁっ」なドン引きシーンに仕上がっている。実に素晴らしい。
しっかりホラーをやりつつ、抑制が利いている点も見事だ。露悪的過ぎることもなければ、過剰すぎることもない。どこか『学校の怪談』シリーズ(1995年~)を思い出す、ご家族揃って楽しめる恐怖度で成立させている(それこそドラマの『学校の怪談』で監督をやった過去もあるし)。両親と子どもで「怖かったねぇ」「ねぇー」と話しつつ、ふと家で寝る前、親は「うちの子が本当にああなったらどうしよう?」と不安になり、子は子で「あの人形がそういうのだったらどうしよう?」と不安になる。そういうちょうどいいバランスである。俳優たちの好演、監督の的確な手腕、すべてがちょうどいい。クライマックスはもっと無茶をしてもよかった気もするが、しかし夏の初め、あるいはお子さんのホラーデビューなどにはうってつけだ。海開きならぬ、“ホラー開き映画”として、絶賛オススメしたい1本である。
■公開情報
『ドールハウス』
全国公開中
出演:長澤まさみ、瀬戸康史、田中哲司、池村碧彩、本田都々花、今野浩喜、西田尚美、品川徹、安田顕、風吹ジュン
原案・脚本・監督:矢口史靖
主題歌:ずっと真夜中でいいのに。「形」(ユニバーサル ミュージック)
配給:東宝
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