興収で読む北米映画トレンド
『リロ&スティッチ』北米V2、配信&グッズ展開が奏功 『ベスト・キッド』新作は思わぬ苦戦
そのほか、今週は第3位に『ベスト・キッド:レジェンズ』が初登場。15年ぶりのシリーズ新作映画で、オリジナル版『ベスト・キッド』からラルフ・マッチオ、2010年のリメイク版からジャッキー・チェンが揃い踏みして少年を鍛え上げるというシネマティック・ユニバース的コンセプトだが、週末興収は2100万ドルという渋めのスタートとなった。
問題は、本作が数週間前の時点で3500万ドル級の発進を期待されていたことだ。その後、数字がだんだんと下方修正され、公開直前には2500万ドルと予想されたが、現実はそれさえも下回った。2100万ドルという速報値に対し、実際は2000万ドルを下回っている可能性も指摘されている。
北米のアナリストは、本作の足を引っ張ったのは、ほかでもない『ベスト・キッド』シリーズのスピンオフドラマ『コブラ会』(2018年~2024年)だったのではないかと見ている。マッチオが主演を務めた同作はNetflixで人気を博し、シリーズへの注目を再燃させたが、すでにファンを十分満足させていたのではないかと。また、視聴者の多くにとって『ベスト・キッド』は家で観るものであり、映画館に行くものではなかったのではないかと。
これは『ベスト・キッド』だけでなく、今後のマーベルや『スター・ウォーズ』にものしかかるであろうストリーミング時代の大きな課題だ。もっとも『リロ&スティッチ』が配信人気を追い風にしたことを鑑みると、成否の分かれ目は「配信」そのものにはないのかもしれない。
Rotten Tomatoesの評価は批評家スコアこそ59%と低いが、幸いにも観客スコアは90%と高い。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A-」を獲得しているため、『コブラ会』と同じく口コミで数字を伸ばせるかがカギとなりそうだ。
海外興収は2600万ドル(まだ4割程度の市場でしか劇場公開されていない)で、世界興収は4700万ドル。製作費は4500万ドルと控えめだから、興行的なハードルは決して高くない。日本では8月29日公開だ。
第5位には、A24製作のホラー映画『Bring Her Back(原題)』が初登場。『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』(2022年)のダニー&マイケル・フィリッポウ監督による最新作で、名優サリー・ホーキンスを出演者に迎えた。週末興収は708万ドルで、製作費は1500万ドル。海外配給権をソニー・ピクチャーズが購入しており(日本はハピネットファントム・スタジオ配給)、コスト回収のハードルは下がっている。Rotten Tomatoesでは批評家90%・観客80%、CinemaScoreでは「B+」とホラージャンルとしては高評価だ。
第10位には、BTS・J-HOPEのソロワールドツアー『j-hope Tour 'HOPE ON THE STAGE' in JAPAN』より、日本・京セラドーム大阪でのフィナーレを生中継したライブビューイングがランクイン。世界70の国と地域で上映されており、北米では631館で93万ドルを記録した。世界興収(日本を除く)は 410万ドルと報じられている。
北米映画興行ランキング(5月30日~6月1日)
1.『リロ&スティッチ』(→前週1位)
6300万ドル(-56.9%)/4410館/累計2億8012万ドル/2週/ディズニー
2.『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(→前週2位)
2730万ドル(-57.4%)/3861館(+4館)/累計1億2261万ドル/2週/パラマウント
3.『ベスト・キッド:レジェンズ』(初登場)
2100万ドル/3809館/累計2100万ドル/1週/ソニー
4.『Final Destination: Bloodlines(原題)』(↓前週3位)
1080万ドル(-44.2%)/3134館(-389館)/累計1億1171万ドル/3週/ワーナー
5.『Bring Her Back(原題)』(初登場)
708万ドル/2449館/累計708万ドル/1週/A24
6.『罪人たち』(↓前週5位)
522万ドル(-39.5%)/2138館(-494館)/累計2億6708万ドル/7週/ワーナー
7.『サンダーボルツ*』(↓前週4位)
480万ドル(-50.5%)/2520館(-660館)/累計1億8185万ドル/5週/ディズニー
8.『Friendship(原題)』(→前週8位)
256万ドル(-44.1%)/1293館(+238館)/累計1236万ドル/4週/A24
9.『The Last Rodeo(原題)』(↓前週6位)
214万ドル(-60.5%)/1995館(-210館)/累計1075万ドル/2週/Angel Studios
10.『j-hope Tour 'HOPE ON THE STAGE' in JAPAN』ライブビューイング(初登場)
93万ドル/631館/累計93万ドル/1週/Trafalgar Releasing
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年6月2日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W022/
https://variety.com/2025/film/box-office/lilo-stitch-box-office-champion-karate-kid-legends-opening-1236415221/
https://variety.com/2025/film/box-office/lilo-stitch-mission-impossible-sinners-box-office-milestones-1236415261/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/karate-kid-legends-box-office-bow-lilo-stitch-1236234498/
https://deadline.com/2025/06/box-office-lilo-stitch-karate-kid-bring-her-back-1236414174/
■公開情報
『リロ&スティッチ』
6月6日(金)全国公開
キャスト:クリス・サンダース(スティッチ役)、マイア・ケアロハ(リロ役)
監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.