朝ドラは“結婚”と“再婚”をどう描いてきた? 時代とともにお見合い結婚から恋愛結婚へ変化
戦前戦後の女性の生き方がテーマになることが多い朝ドラでは、女性主人公が戦争によって伴侶を失うことは多い。そして、その夫たちは将来有望な優秀な人物であり、優しく包容力のある立派な男として描かれる。だからこそ、戦争の悲惨さを感じるし、戦後、女性たちが生きていく際の心の支えにもなっていく。
そして、再婚相手もまた、戦争による心の傷を負っている。航一は戦時中、「総力戦研究所」に所属しており、日本の敗戦を予測する結果を導き出していたが、その提言は政府に受け入れられず、航一は戦争を止められなかった責任を感じ続けていた。寅子が航一を気に掛けるようになったきっかけも、「ごめんなさい」と航一が謝罪の言葉を口にしたことだった。
この時代の再婚は、お互いが抱えている大きな傷を共有しつつ、新しい時代を生きるために前を向くためのものだったのかもしれない。そして、それはもう家と家のものでもなく、自由なお互いの気持ちを大切にするものだった。そして、時代も、お見合い結婚から自由恋愛結婚へと移っていく。
『あんぱん』ののぶの結婚相手、若松次郎(中島歩)もかなり素敵な人として描かれている。夢がまだ見つからないと悩むのぶを、「のぶさんは足が速いから、いつからでも間に合う」と、生前の父・結太郎(加瀬亮)と同じ言葉で励ます姿には、「これ以上の伴侶はいないのでは?」とさえ思わされる。次郎のモデルの方は戦死ではないようだが、若くして命を落とす人物のようである。いずれにせよ、のぶにとって、少なくとも簡単に忘れられるような人ではないだろう。
今田美桜の芝居は“鏡”のよう 『あんぱん』の“2つの結婚”は残酷なストーリー展開に
朝ドラことNHK連続テレビ小説『あんぱん』第8週「めぐりあい わかれゆく」(演出:柳川強)では、サブタイトル通り、大きな出会いと…今のところ、全く出る幕がなさそうな嵩だが、戦争から戻った時、伴侶を失ったのぶとどう向き合っていくのか。お互いに壮絶な経験をし、大切な人を亡くした後、そして新しい時代の波がやってきた時に、どんなふうに乗り越え、支え合っていこうとするのか。朝ドラ史上に残る再婚ストーリーとなることは間違いなさそうだ。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK