インド映画×ループもの まさかの組み合わせを最高のバランスで仕上げた『政党大会』が必見

 リッチな若者カーリク(シランバラサン)は、飛行機に乗って友人の結婚式へ向かっていた。実は仲間たちと組んで、ある作戦を決行しようと考えていたのだが……いろいろあった末に、極悪警官のダヌシュコディ(S・J・スーリヤー)に捕まる。しかもダヌシュコディが計画した州首相の暗殺犯に仕立て上げられ、おまけに警官に射殺され……と、思ったら飛行機に乗っていた時にまで時間が戻った! 同じ時を繰り返す“タイムループ”だ! 時を駆ける男と化したカーリクは、州首相暗殺を阻止すべくループを繰り返すのだが……。

 『政党大会 陰謀のタイムループ』(2021年)は、インドからやってきたタイムループアクションサスペンスである。……という話を聞いて、正直こう思った人は多いだろう。「尺との相性、大丈夫ですか?」と。だってインド映画といえば、上映時間が長いことで有名だ。それは本作も同様である。対してタイムループものは、テンポ感が非常に大事だ。同じ話を繰り返すわけで、一歩間違えば話が足踏み状態になったり、話が複雑になりすぎて観客を置いてけぼりにする可能性がある。過去のループもの映画の傑作や快作、たとえば『恋はデジャ・ブ』(1993年)や『ハッピー・デス・デイ』(2017年)は、だいたい100分前後であるし、ハリウッド超大作の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)でも113分だ。果たして尺と題材が合うのかと心配になるが、結論から言うと……心配無用! むしろ本作は、「長尺こそタイムループものと相性がいいのでは?」とすら思えてくる快作である!

 本作はタイムループもののツボを上手く押さえている。まずは予習と実践の面白さ。いわゆる「進研ゼミでやったところだ!」的な快感だ。本作でのタイムループの発動条件は、主人公カーリクの死である。そんなわけで、カーリクは大目的をクリアするために、レベルアップと新情報の確保に努めるのだが……そのたびに死んでしまう。悪党たちの拠点に乗り込んでの大乱闘では、何度も死にながら敵の攻撃を覚えていく。格闘シーンは何度もあるのだが、特に中盤のトライ&デスな格闘シーンは、まさにループものならではの魅力に溢れている(戦っている途中で敵に殺されるときの「あ~っ、ミスったぁ~」的な、殺されているのに面倒そうな表情が絶妙)。

 こうした進研ゼミ的な快感と並ぶタイムループものの醍醐味といえば、伏線の回収と予想外の方向に転がるストーリーだ。本作でも非常に分かりやすいものから、「実は、あの時のアレが……」的な伏線を拾いつつ、話は二転三転していく。中盤以降には強烈なサプライズがあり、そこからは映画のドライブ感は一気に高まる。カーリクが頭をフル活用して、そして時には単純な体力とガッツで、次々と現れる問題を解決していく姿は非常に面白い。

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