ベルトラン・ボネロ監督『けものがいる』本編映像公開 竹中直人ら著名人のコメントも

 4月25日に公開されるベルトラン・ボネロ監督最新作『けものがいる』のアザービジュアルと本編映像が公開された。

 第80回ヴェネチア国際映画祭の公式批評スコアで1位を獲得した本作は、『SAINT LAURENT サンローラン』『メゾン ある娼館の記憶』などのボネロ監督が、イギリスの文豪ヘンリー・ジェームズの中編小説『密林の獣』を大胆に翻案。近未来をクールに映像化した2044年、35ミリフィルムで撮影された1910年、実際の事件にインスパイアされた2014年と、3つのコンセプトの世界観を緻密に構築した。

 主人公のガブリエル役を演じたのは、『007』シリーズや『デューン 砂の惑星PART2』などで知られるレア・セドゥ。また相手役となるルイ役には当初ギャスパー・ウリエルが決定していたが、2022年1月に不慮の事故で急逝したことで、『1917 命をかけた伝令』のジョージ・マッケイに役が託された。共同プロデューサーには監督のほか俳優としても活躍するグザヴィエ・ドランが名を連ね、声の出演も果たしている。

レア・セドゥの感情が浄化される 『けものがいる』本編映像

 公開されたアザービジュアルと本編映像は、人間の感情は不必要とされ、有意義な仕事を得るには“感情の消去”をしなければならない2044年のAI中心の社会を舞台に、孤独な女性ガブリエル(レア・セドゥ)が疑問を抱きながらも浄化を決意し、実行しようとしているシーンを切り取っている。アザービジュアルは、白を貴重としたポスタービジュアルと対をなす黒を基調したデザインで、近未来の“感情の消去”装置をスタイリッシュにビジュアル化。本編映像では、セドゥが主人公ガブリエルの心の迷いや不安を繊細に演じている様子が確認できる。

 また、小説家の平野啓一郎や俳優の竹中直人をはじめ、音楽家でプロデューサーのジム・オルーク、『ドライブ・マイ・カー』などの映画音楽も手掛ける音楽家の石橋英子、AIと美術について制作しているアーティストの岸裕真、作家でドイツ文学者の中野京子ら、各界の著名人よりコメントも到着した。

コメント

葦沢かもめ(SF作家・慶應SFセンター研究員・AIエンジニア)

AIに管理された未来で、あなたは愛に飢えた「けもの」に出会う。
あなたの心の中にいる「けもの」に。

五十嵐太郎(建築評論家)

異なる時空で繰り返される逢瀬、そこで映像の詩というべき、美しい構図と色彩による鮮烈な場面の数々を目撃する 。

石橋英子(音楽家)

素直になれず、感情を表せず、待ち続けたけものが走る荒野はあるのだろうか。
監督が作曲したスコアが我々の心を試しているようだ。
ニコラス・ローグの映画のように鮮やかに区切られていく時間にただ身を任せてください。

伊藤千晃(歌手・タレント)

人間の良さ、らしさとは何なのか。
AI技術が進む現代、近い未来に起きてもおかしくないリアルさを感じ、感情の尊さを考えさせられる映画でした。
映像のお洒落さや仕掛け、そしてレア・セドゥ好きな私としては、演技だけでなく、ファッションやヘアメイクも楽しめる魅力的な作品でした。

ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン・アーティスト)

ニューロマンティックバンドのヴィサージの『Fade to Grey』が大音量で流れ、’80sファッションで盛り上がる「1980」というクラブ。これはX.ドランの『わたしはロランス』のディスコシーンのパーフェクトな再現!
前世の記憶を巡る本作は、もうひとつわたしたちのドラン体験の記憶にも触れる!

岸裕真(アーティスト)

ひとは映画に感情を委ねる。
けものはそれを外からじっと視ている。

辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

スピリチュアルでスペクタクルな輪廻のダンスムービー! 
この作品を観たあとは、来世に遺恨を残さないためにとりあえず会う人全員に親切にしたくなります。

ジム・オルーク(音楽家・プロデューサー)

時間とその無常について、劇場を出た後も長く心に残る作品。
2020年代に見た映画の中で、これを超える作品は思いつかない。

竹中直人(俳優・映画監督)

こんなレア・セドゥをスクリーンで観るのは初めてだ!
最高の演技!! 最高の演出!
たまらない……たまらなすぎる! 時空を超えた予想も出来ないストーリー展開!!
キャスティング、音楽、衣装、美術、全てが素晴らしく美しい……!
何度でも観たい映画! 観終わってもまだ感動が醒めない!
頭が破裂しそうだ……! すごい監督に出会ってしまった……
怖いほどロマンチック! いとおしくくるおしい! サイコー!

中野京子(作家・ドイツ文学者)

実にフランス映画らしい不思議な雰囲気の中で、
レア・セドゥの圧倒的魅力がほとばしる。

平野啓一郎(小説家)

構成力が際立つが、映画を成立させているのは、やはり役者の演技力だ。
映画制作技術の批評でもある作品。

山崎まどか(コラムニスト)

愛を求めて凶暴化する人が「けもの」なのか
愛を差し出すのを恐れる人が「けもの」なのか
衝撃的なエンドタイトルと共に、永遠の謎が残る。

■公開情報
『けものがいる』
4月25日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか 全国順次公開
出演:レア・セドゥ、ジョージ・マッケイ、ガスラジー・マランダ、グザヴィエ・ドラン(声)
監督・脚本・音楽:ベルトラン・ボネロ
共同プロデューサー:グザヴィエ・ドラン
配給:セテラ・インターナショナル
2023年/フランス・カナダ/仏語・英語/ビスタ/5.1ch/146分/原題:La bête/英題:The Beast/字幕:手束紀子
©Carole Bethuel
公式サイト:kemonogairu.com
公式X(旧Twitter):@Kemono_movie

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