我々は“テレビ”とどう向き合っていくべきなのか 『ショウタイムセブン』は現実の写し鏡に

 そもそも『ショウタイムセブン』は、ハ・ジョンウ主演の韓国映画『テロ,ライブ』(2013年)を原作とする作品。ラジオ局のスタジオという限定された空間で物語が進行していた『テロ,ライブ』に対して、『ショウタイムセブン』はラジオ番組のスタジオからテレビ番組のスタジオへと物語の舞台が移行するという違いがある。ふたつの作品には、前半こそ同じような描写を指摘できるものの、全体の構成は似て非なるものだという印象。『ショウタイムセブン』は『テロ,ライブ』を基にした、全く別の作品となっているのだ。また、センセーショナルな中継内容によって視聴者の共感を牽引してゆこうとする展開は、強い言葉を持った声の大きな人間に煽動されがちなSNS時代を象徴するものでもある。

 作品同士の印象が異なる理由のひとつは、『ショウタイムセブン』に散りばめられた劇中番組で流れる架空のニュース内容にある。例えば、<電力会社><核燃料施設><収賄疑惑>といったキーワード。架空の街や架空の政党名を使いながらも、私たちの暮らす現実社会と地続きとなるような実際の社会問題を想起させずにはいられない点は重要だ。架空の出来事であると理解しながらも、劇中の言動やニュースが現実と近似することで、観客はどこかで現実の問題と重ねながら作品と対峙することになるからだ。

 例えば、電話越しにテロの首謀者だと名乗る人物は、電気代の高騰を訴える。これも、私たちの生活と直結する問題のひとつ。今作においては、テロの真犯人を探すことよりも、観客に現実社会の問題を想起させることの方が重要なのではないか?と邪推させるほどなのである。そういう意味では、テレビメディア側の隠蔽体質を断罪することによって、大衆が阿部寛の演じるキャスター側ではなく、テロリスト側の理屈に一定の理解を示すようになってゆく展開も重要だといえる。生中継という性質上、キャスターの折本は即時性を優先してしまい、時折「CHECK,DOUBLE CHECK」を失念してしまうだけに尚更なのだ。個人が情報を発信することが容易くなった社会に変化したからこそ、「CHECK,DOUBLE CHECK」の精神は、より肝要になってゆくはず。映画の中で今一度テレビメディアのあり方を問うていることは、時代の要請であるようにも感じさせるのである。

■公開情報
『ショウタイムセブン』
全国公開中
出演:阿部寛、竜星涼、生見愛瑠、井川遥、吉田鋼太郎、前原瑞樹、平原テツ、内山昂輝、安藤玉恵、平田満
監督・脚本:渡辺一貴
原作:The film "The Terror, Live" written and directed by Kim Byung-woo, and produced and distributed by Lotte CultureWorks Co., Ltd. and Cine2000
配給:松竹、アスミック・エース
©2025『ショウタイムセブン』製作委員会
公式サイト:https://showtime7.asmik-ace.co.jp/
公式X(旧Twitter):@showtime7_movie

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