『イカゲーム』シーズン2、世界のファンの受け止め方は？　賛否の行方を考える

キャラクターについて

　シーズン1の方がそれぞれのキャラクターに深みがあって良かった、という意見も少なくない。しかし、シーズン2でも人気のキャラクターはもちろんいる。特に特殊部隊出身のヒョンジュ（パク・ソンフン）と厳しくも優しい母クムジャ（カン・エシム）、そして新たな表情を多く見せたフロントマンや、スカウトマン（コン・ユ）の人気も非常に高い。特にYaBoyRoshi、The Normies、Reel Rejects、チャンネル登録者数139万人のRT TV、35.3万人のBadd Medicineなど多くのリアクターが第1話でのコン・ユの快演ぶりを称賛し、イ・ジョンジェとの演技合戦に魅了されていた。

　先に述べた「キャラクターの背景が薄い」という指摘の中でもヒョンジュはゲームに参加した動機や、外の世界での葛藤、ゲームを通した人間的な成長が焦点的に描かれたキャラクターと指摘されている。一方で、トランスジェンダーの役柄をシスジェンダーの俳優が演じていることに対して問題視する声も。

　Sunday Times誌のベストセラー『The T in LGBT』の著者であり、YouTubeチャンネル登録者数113万人のジェイミー・レインズは作品内のヒョンジュのキャラクターに関しては「非常に良いと思った」と言及。「彼女がお金を必要とした理由が自分に正直に生きることで職を失ったり、周囲との関係を失ったりする可能性に晒されるなど、実際のトランス女性が抱える悩みとリンクして描かれている」、「職を失ったから生活と手術のために借金が増えてしまったなどお金が必要になった経緯が無理やりではなく、自然であることに対して好印象を抱いた」と語る。そして劇中、序盤でトランス女性を理解できなかったクムジャがヒョンジュとの交流を通してそれを理解し、自然に一緒に女子トイレに行こうと誘うシーンが素晴らしかったとコメントした。

　加えて、劇中にヨンミ（キム・シウン）がヒョンジュに対して「オンニ」と呼ぶシーンでまだトランスジェンダーに対して厳しい目が向けられやすい韓国という舞台の中で、彼女が「お姉さん」と自然に呼ばれることの意味を重要視していた。そういった、描くべきもの、そしてヒョンジュのクールなキャラクター性を称賛した上で、レインズはトランスジェンダーの役をトランスジェンダーが演じないことを問題視する。

　歴史を振り返ってもトランスの役が映画やテレビショーの中でそもそも少ない中、シスジェンダーにその役を与えてしまうことはトランスアクターの役を奪っていること、そしてシスジェンダーがトランス女性にキャスティングされるということは時に「トランス女性がただ女性の服を着たりメイクをしたりしているだけの、女性のふりをした男性」などといった誤解を意図せずとも強める危険があると指摘。

「視聴者に対し潜在意識や無意識的にトランス女性は本当の女性ではないという認識を助長させる可能性があります。しかし、実際のところはトランス女性は女性です」

　さらに、テレビや映画の中でトランスジェンダーの役柄が意味があり、肯定的に、本物のように表現されることの重要性も解いた。ヒョンジュを演じたパク・ソンフンはシーズン2配信直後の12月30日に自身のSNSにて『イカゲーム』をパロディしたアダルトビデオのパッケージ写真を投稿し、すぐ削除したことでニュースに取り上げられた。写真内の女性の身体がモザイクなしでそのまま露出していたことから議論を呼び、1月8日に行われた本作のインタビューにて謝罪を行った。しかし、キャスティングが決定していたはずの新ドラマ『暴君のシェフ』から降板され、余波が今後も続く可能性も。

　シーズン3はすでに撮影が終了されていることから、このスキャンダルがパク・ソンフン演じるヒョンジュの運命に何か影響を与えることはないだろう。

　基本的に本稿で取り上げたリアクターの多くが「普通に楽しく観たが、やはり何の決着もつかずにクリフハンガーで終わってしまったことが残念」と語るように、『イカゲーム』シーズン2はシーズン3をもってして正当な評価が下されるのだろうか。2025年内配信の続編に期待したい。

■配信情報
Netflixシリーズ『イカゲーム』
シーズン1＆シーズン2：Netflixにて独占配信中
シーズン3：Netflixにて2025年世界独占配信
監督・脚本・製作総指揮：ファン・ドンヒョク
製作総指揮：キム・ジヨン
出演：イ・ジョンジェ、イ・ビョンホン、イム・シワン、カン・ハヌル、ウィ・ハジュン、パク・ギュヨン、イ・ジヌク、パク・ソンフン、ヤン・ドングン、カン・エシム、イ・デイヴィッド、チェ・スンヒョン、ノ・ジェウォン、チョ・ユリ、ウォン・ジアン、コン・ユ（特別出演）