『べらぼう』生田斗真は“怪物”がよく似合う 仲間由紀恵の一橋治済に匹敵する“怖さ”に期待

 なお、一橋治済といえば、2023年に放送された男女逆転版『大奥』Season2(NHK総合)での仲間由紀恵の怪演が思い浮かぶ。仲間演じる治済は強烈だった。劇中、「化け物」と表された治済だが、その恐ろしさは度を越えている。武女(佐藤江梨子)を使って邪魔者を排除し、隠居を願い出た武女をも切り捨てる。それだけではない。治済は、自身の孫にも毒を盛った。字面だけでも十分恐ろしいが、何よりゾッとするのが仲間演じる治済が常にうっすらと微笑みを浮かべていたこと。自らの行いを特別悪いとも恐ろしいとも感じていない佇まいに身の毛がよだつ。そんな治済が最もイキイキとした表情を浮かべていたのが、幼き頃の息子・家斉(中村蒼)が怪我を負った時。怪我を負わせた責任を取り、武女が毒を飲み悶え苦しむ場面で、治済はそれはもう楽しくて楽しくて仕方がないといった恍惚の表情を浮かべていた。仲間が見せたあの顔つきは、一度見たら忘れられないほど鮮烈な印象を残す。

『大奥』仲間由紀恵の一橋治済は原作に負けず劣らずの怪物に 恐怖の微笑みを体得するまで

「あの女はの、人の皮を被った化け物じゃ」  NHKドラマ10『大奥』Season2「医療編」がクライマックスを迎える。「医療編…

 『べらぼう』と『大奥』は異なる物語だが、いずれの脚本も森下佳子が担当している。だからこそ、生田版の治済がどう描かれるのかが楽しみで仕方ない。『べらぼう』第2回で、「御三卿」の一人である清水重好(落合モトキ)が「まさかのことが起こらぬ限り、我々の出番はございませぬ」と言った時、治済は嫡男・豊千代を愛おしげに抱きながらこんな言葉を口にする。

「まさかのこと……など起きてはなりませんしなぁ」

 仲間版の治済が邪魔者を次々に消していったように、生田版の治済も“まさかのこと”を引き起こす予感がしてならない。仲章よりも裏の顔が露骨に感じられないからこそ、台詞や態度の一つ一つが余計に怖い。宴席で、人形師に扮して傀儡人形を操っていたように、彼は今後、この場にいる人物を思うままに操るのではないか。待ち受ける展開に恐怖を予感しながらも、生田が見せてくれるであろう「怪物」治済に胸が高鳴る。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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