2024年の年間ベスト企画
アナイス(ANAIS)の「2024年 年間ベストアニメTOP10」 表現の先にある“ユニークな物語”
正直、6位と5位は自分の中で優越つけ難かったのだが、 ここからは上位5位の作品にそれぞれ触れていきたい。
『逃げ上手の若君』は原作者・松井優征の独特なタッチを完璧に、しかし違う言語を使って巧みに表現していたことに驚いた。毎週放送のアニメでオリジナリティ満載のあの映像表現の選択ができるなんて、どうかしている。
大概、第1話はどの作品も気合が入っているから「おお〜」と思うのだが、『逃げ上手の若君』は最終話まで作画とアニメーションの“遊び”に対する気合が段違いだった。明らかに原作漫画の絵や展開をなぞるだけの作品とは一線を画している。
原作が完結を迎えたが、そんな本誌と呼応するように描かれたのがアニメ『僕のヒーローアカデミア』のシーズン7である。未だかつてないほど堀越耕平のキャラクターデザインに寄った作画が印象的で、スタジオの気合いが感じられた。声優陣の演技も素晴らしく、毎話いろんなキャラに焦点が当てられて深掘りされる中、彼らの発生、声色だけで泣かされた回も少なくない。
『名探偵コナン』シリーズが大好き、という私情を差し引いても『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』は痛快なアクションとミステリーが楽しめる、純粋なエンターテイメント作品としてレベルが高かったように感じる。
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が持つ“衝撃”の意味 長い時間を経て結ばれた点と点
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』がついに公開2周目に突入。オープニング興収が33億円超えというロケットスタートを記録した本…今作は「刀」を巡って繰り広げられるコナン&平次、怪盗キッド、そして悪そうな奴らの三つ巴ハイスト映画としての要素もあるなか、平次と和葉を軸とした恋愛要素も強いので、本当にエンタメの美味しいところどりみたいな作品である。和葉の涙と共にaikoの主題歌「相思相愛」が流れた瞬間、筆者も泣きました。
『ダンダダン』は、もう圧倒的なセンス。ユニークな映像表現、という話から始まった本稿において、サイエンスSARUの偉業を讃えずして終わることはできない。龍幸伸によるユニークな物語と設定をただ映像化するにとどまらず、色彩演出の重要性さえ解いてくれる作品だ。カラースクリプトによって生まれるキャラクターの個性や、そこに付随される意味など、深掘りしようと思えば死ぬほどできる奥行き感。OP&ED曲も最高!
クオリティがクオリティなだけに第2期はしばらく待たなければいけないものかと覚悟していたが、2025年7月と最短レベルで続きが観られることも嬉しい!
今年の1位は『ロボット・ドリームズ』だった。アメリカの作家サラ・バロンによる同名グラフィックノベルを原作に、擬人化された動物たちが暮らす1980年代ニューヨークでドッグ(犬)とロボットが織りなす友情を描いている。全編を通して、セリフといったセリフはない。しかし、ノンバーバルだからこそ普遍的な作品のテーマがあらゆる人の心に染み渡るようになっているのだ。
誰かと出会い、関係性を築くこと。友情とは、思い出とは、喜びとは、寂しさとは。それらを温かみのあるアニメーションで描く本作。鑑賞後にアース・ウインド&ファイアー「セプテンバー」を聞くと思わず涙が出てきてしまう。もっと評価されるべき、そして多くの人に観ていただきたい作品でもあるので1位に選ばせていただいた。派手な作品ではないが、人によっては間違いなく心に残る作品になるのではないだろうか。