朝ドラが描いてきたヒロインの“就活” 橋本環奈、伊藤沙莉、福原遥が体現した社会の変化

 「朝ドラ」とは特定の人物の人生を描くもので、各作品ごとの主人公の誰もが“就職活動”を行ってきた。放送中の『おむすび』(NHK総合)は早いもので第11週へと突入。本作は平成元年生まれのヒロイン・結(橋本環奈)が栄養士として、人の心と未来を結んでいく青春模様を描く作品だ。これから彼女が就職することで物語は本格化していくことになる。

 12月29日には本作の「総集編前編」が放送されるようなので、乗り遅れてしまった視聴者や途中でついていけなくなってしまった人も、まだまだ取り戻せるだろう。

 さて、主人公が就職をすることでそれぞれの作品は特定の職業を描くことができるわけだが、その前には大変な“就活”を経験しなければならない。近年の「朝ドラ」ではこの“就活”をどのように描いてきただろうか。ここで数作をピックアップし、「朝ドラヒロインの就活」に着目してみたい。

 伊藤沙莉が主演を務めた『虎に翼』(2024年度前期)は、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)が法曹の世界を歩んでいくさまを描いたものだった。物語のはじまりは昭和初期。女性の社会進出がほとんどなされていなかった時代であり、若き日の寅子も例に漏れず、気乗りしないお見合いを強いられる日々を過ごしていた。しかしある日、彼女はこの社会を秩序立てる“法律”というものに出会い、目の前の景色が変わった。法曹の道に進めば、世の不条理に立ち向かうことができる。そうして日本初の女性弁護士となったのだ。

『虎に翼』寅子が“見本”として示した声をあげることの意義 “無数の雨だれ”は続いていく

法曹界に女性が少なかった時代に先頭に立って活躍した三淵嘉子さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説『虎に翼』が完結した。  主人…

 のちに寅子は裁判官にまでなったのだから、これは物語の前半部分。弁護士資格を持っている彼女が法律事務所に所属するまではスムーズだったと記憶しているが、やはり困難なのはその前後だった。勉学に励み、試験をパスすることはもちろんだが、何せ女性がほとんどいない世界なのだ。彼女の周りにはつねに逆風が吹いていた。あの時代と比べたら現代では圧倒的に改善されたといえるだろうが、マクロな視点で見ればまったくそうではなかったりもする。『虎に翼』の就活では、ヒロインの人生の転機だけでなく、世の女性を、ひいてはこの世界で理不尽な立場に立たされる人々を可視化させていた。

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