村田沙耶香『消滅世界』2025年秋に映画化決定 映像ディレクター川村誠が映画監督デビュー

 芥川賞作家・村田沙耶香の小説『消滅世界』が、2025年秋に映画化されることが決定した。

 『消滅世界』は、累計発行部数170万部を超える芥川賞受賞作『コンビニ人間』直前の2015年12月に刊行された、村田による長編小説。超少子化の先、“性”が消えゆく世界で激動する“恋愛”“結婚”“家族”のあり方に翻弄される若者たちを描く。

 村田は2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀作、2009年『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞を受賞。2016年に第155回芥川龍之介賞を受賞した『コンビニ人間』は、2018年にアメリカとイギリスで出版されたほか、30カ国以上で翻訳されている。イギリスBBCが選ぶ2020年最高書籍、アメリカのザ・ニューヨーカー誌のベストブックスにも選出された。

 本作の監督・脚本を務めるのは、映像ディレクターの川村誠。MTV出身の川村は、Radiohead、Oasis、Massive Attack、The Smashing Pumpkinsなどのフェス/ライブ映像や、BOOM BOOM SATELLITES、BIGMAMAなどさまざまなアーティストのミュージックビデオを制作。そのほか、Coke ZeroなどのCMやショートフィルム、NHK大河ドラマドキュメンタリーなど多岐にわたるフィールドで活動している。川村にとって、本作が長編映画監督デビュー作となる。

 川村は原作との出会いについて「足元が揺らぐような衝撃を受けた」と述べ、これは「『今』語られるべき物語」と確信し映画化を熱望。「狂おしく切ないストーリーを、美しく繊細に映像化することを目指しました」と完成を間近に控えた心境を述べる。「最高のキャスト・スタッフと共に作り上げた本作を是非劇場で味わっていただき、今を生きる皆さんの心に少しでも突き刺さる何かが残れば幸せです」とメッセージを送った。

コメント

村田沙耶香

私の作品が映像になるのはこれが初めてです。私の個人的な感覚ですが、映像になるということは、言語で制作した自分の作品世界が、監督さんの作家性や俳優さんたちのその瞬間の演技など、私には想像がつかないもので化学変化のようなことが起き、映像という形に凝縮されて新しく生まれ直すことなのかな、と思っています。自分の作品とは違う映像の『消滅世界』に広がるのがどのような光景なのか、まだ未知の世界で想像できませんが、とても楽しみにしています。

川村誠

想像を超える規格外の世界観、耳を疑うようなセリフの数々、思考を刺激する美しい言葉で綴られた原作と出会い足元が揺らぐような衝撃を受けました。
この物語から受け取ったイメージを私の感性で映画として表現する自由をくださった村田沙耶香さんに心より感謝しています。
これは、自分たちが「正しい」と信じているものの奥底にある本当のことを探る不思議な思考実験であり恋愛・結婚・家族——全ての価値観が激動するこの世界で性に悩み、愛に迷う方々に捧げる映画です。
この狂おしく切ないストーリーを美しく繊細に映像化することを目指しました。
最高のキャスト・スタッフと共に作り上げた本作を是非劇場で味わっていただき、今を生きる皆さんの心に少しでも突き刺さる何かが残れば幸せです。

■公開情報
『消滅世界』
2025年秋公開
原作:村田沙耶香『消滅世界』(河出文庫)
監督・脚本:川村誠
配給:ナカチカピクチャーズ

関連記事