『無能の鷹』鷹野化した“鳩山”井浦新が愛おしい 仕事にも恋にも全力なキャラクターたち

 お風呂でシャワーを浴びている時や、布団に入って眠気を待っている時。そういう何気ない瞬間に、黒歴史がフラッシュバックしたことはないだろうか。特にかつて自分が好きな人にとった行動を思い出すと、消えてしまいたい気持ちになる。

 『無能の鷹』(テレビ朝日系)第7話は、それくらい人をキモくしてしまう恋の話。この回のハイライトは、間違いなく“鷹野化”した鳩山(井浦新)だろう。

 鳩山といえば、ひと癖もふた癖もあるメンバーが揃っている「TALON」においては最も常識人。わりとそれぞれが好き勝手に振る舞う中で、鳩山はみんなが嫌な仕事も率先して行う会社の良心とも言える。

 そんな彼を変えてしまったのは、家庭の悩みだった。最近外泊の多い妻・美沙(真飛聖)の浮気を疑う鳩山は自分が普通すぎてつまらないことが原因と結論づけ、普通を逸脱して自由に生きる鷹野(菜々緒)を自身の教育係に任命。いつもと立場が逆転した二人は、開発部の鵙尾(土居志央梨)が作ったAIアプリの指示に従って、ギャルカフェ、熱波サウナ、特撮映画のエキストラ、サバゲーなど、普段はやらないことに次々とチャレンジする。

 そうして鷹野と1カ月間過ごした結果、鳩山に変化が。真っ白な服に、軽やかなテンション。仕事中も猫の動画を見ながらペン回しをしたり、“たらこサイダー”という謎のドリンクに手を出したりと、何もかもが“鷹野化”してしまう。

 そんな鳩山を演じているのが、『アンナチュラル』(TBS系)でミステリアスな色気溢れる解剖医の中堂や、『光る君へ』(NHK総合)で権力への執着が狂気じみた藤原道隆を演じていた人と同一人物だと誰が思うだろう。作品ごとに大きくイメージを変える井浦新の演技は、まさに変幻自在。本作と同じく貴島彩理プロデュースのドラマ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)では、麻生久美子演じるヒロインと魂が入れ替わる中年男性を演じていたが、あの時と匹敵する愛らしい姿を見せてくれた。

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