しかし、繰り返しになるが、道長が今も昔も変わらず愛情を向けているのはまひろであり、倫子ではない。第43回で「私は殿に愛されてはいない」と倫子が静かに語り始めても、道長は否定も弁解もしなかった。それでも倫子は「たまには私の方もご覧くださいませ」とかわいらしく笑う。そんな倫子を何ともいえない表情で見つめるしかなかった道長はほんの少し情けなく映る。

　もちろん倫子は道長と道長が心から愛する人との関係を全く気に留めないというほど図太い人物ではない。第44回で3人が鉢合わせした際、倫子を演じる黒木の含みのある台詞の言い回しには、まひろと道長の特別な間柄に対する疑念が感じられて、観ていて気が気でなかった。

　次週の第45回では、まひろの源氏物語がいよいよ終盤を迎え、まひろは長年の夢だった旅に出る決意を固め、道長は出家を決意するとある。予告編では、倫子が悲しげな表情で「藤式部がいなくなったからですの？」と口にしていた。旅や出家によって物理的に距離が離れても、3人の複雑な間柄はまだまだ解消されないと見る。3人の関係の行く末も見届けたい。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送／ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演：吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作：大石静
音楽：冬野ユミ
語り：伊東敏恵アナウンサー
制作統括：内田ゆき、松園武大
プロデューサー：大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー：川口俊介
演出：中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供＝NHK