『光る君へ』渡辺大知の行成になぜ惹かれるのか 道長「俺のそばにいろ」の苦しさ

『光る君へ』渡辺大知の行成になぜ惹かれる?

 NHK大河ドラマ『光る君へ』第43回「輝きののちに」で、渡辺大知演じる藤原行成が道長(柄本佑)に大宰府への赴任を申し出る場面が切なかった。

 道長は行成ら四納言を集め、三条天皇(木村達成)は目が見えず、耳も聞こえず、帝としての力を果たせる状態ではないと話す。藤原公任(町田啓太)、藤原斉信(金田哲)、源俊賢(本田大輔)は三条天皇の譲位の機運が高まるよう内裏に働きかけることを約束したが、行成は三条天皇に同情的な姿勢を示していた。

 行成を演じている渡辺はこれまでも、道長と一条天皇(塩野瑛久)の間で心が揺れ動く様をこまやかな表情変化で表してきた。さまざまな人の間を取り持つ立場にいるだけあって、周囲の言動を気にかけ、細やかな気遣いを見せる姿が行成の魅力だ。

 その一方で、その立ち回りが苦しげに感じられることもある。一条天皇やその第一皇子である敦康親王(片岡千之助)の気持ちを汲みとる行成は、やや強引な道長の行動に異を唱えることがあった。第41回では、道長が彰子(見上愛)と敦康親王の関係に不安を覚えるあまり、敦康親王が内裏に上がれないようにせよと命じた際、行成は「恐れながら、左大臣様は敦康様から多くのことを奪いすぎでございます」と諫め、「左大臣様がおかしくおわします」という言葉も残している。

 このような場面において、渡辺の台詞の言い回しは決して感情的になりすぎない。そして落ち着いた態度で物事に向かおうとする姿勢が感じられる。だが、その振る舞いは行成の感情を完全に覆っているわけではない、というのが絶妙だ。だからこそ視聴者は、行成の心情を感じ取りながらも、政治の中で自分の役割を果たそうとする彼の意志も理解でき、彼の人柄に魅力を感じたり、彼の立場に共感したりするのではないだろうか。

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