『アンメット』は私たちの“日常”に光を当てる 杉咲花&若葉竜也らの熱意が結実した傑作に

 そんな『アンメット』の世界にリアルタイムで放送されていたときより、さらに深く没入させてくれるのが、11月20日に発売されたBlu-ray&DVD BOXだ。一部の話数はディレクターズカット版でも収録されているのだが、なかでも見逃せないのはやはり最終話。多くの人が1秒でも長く見ていたいと願った場面が大幅にボリュームアップされているだけではなく、放送では収まりきらなかった未公開のシーンがたっぷりと追加されており、また新鮮な感動を味わうことができる。

 例えば、三瓶と暮らし始めたミヤビの自宅に綾野(岡山天音)と麻衣(生田絵梨花)が訪問するシーンは予告でチラッと映ってはいたものの、本放送ではカットされていた。この4人といえば、まだミヤビが事故に遭う前、脳神経外科の国際会議が行われた南アフリカのケープタウンで一緒に食事をしたことがある。ミヤビはその時の話を麻衣から教えてもらっただけで、映像として記憶しているわけではない。だが、再びみんなと食事を囲む中でミヤビが何気なく呟いた一言から、4人で過ごしたあの時間がかけがえのない思い出として彼女の中に残っていることがわかり、思わず目頭が熱くなった。

 特典ディスクも大ボリュームの内容で、メイキング集、出演者4人(杉咲花・若葉竜也・岡山天音・千葉雄大)と米田孝プロデューサーによる座談会、尾崎匠海のセットツアー&インタビューが収録されている。その画面を通してひしひしと伝わってくるのは、現場の熱量。特に、杉咲と若葉の役と向き合う真摯な姿勢には驚かされるばかりだ。

 印象的だったのは、座談会で飛び出した裏話。第3話にて食堂でミヤビと仲良く食事する綾野に三瓶が嫉妬を露わにして「あの野郎……ぶっとばします」と席を立ち、それを星前(千葉雄大)が止めるシーンがあった。実は「ぶっとばします」から、それに続く「大丈夫です。昨日『ロッキー』見たんで」という台詞はアドリブで、若葉が原作から抽出してきたものであることを千葉が明かしている。さらに普段は左利きの三瓶がミヤビから渡されたものは右手で受け取るようにしているのも、原作をもとにした若葉のアイデアだそう。それだけ三瓶を演じる上で原作を深く読み込んでいるということだ。一方の杉咲もミヤビの日記を書くにあたって、どういう表現が適切かを米田プロデューサーと議論を重ねたという。シーンになっていないページまでびっしりと文字を書き込み、腱鞘炎になったという裏話も飛び出した。

 そういうこだわりの連続が、第9話で多くの人を感動の渦に巻き込んだミヤビと三瓶の長回しのシーンにも繋がっているのだろう。「三瓶先生は私のことを灯してくれました」というミヤビが憑依したとしか思えぬアドリブが杉咲から溢れてきたように、役を“演じる”というよりも“生きる”と表現するに相応しい2人の演技の裏には、人々の心に残り続ける作品をつくるために積み重ねてきた努力があるのだ。そんな2人の並々ならぬ思いが周囲に伝播していき、クランクアップでは出演者が感極まって泣き出したり、「また皆さんと一緒に仕事がしたい」と口々に語る姿が収められている。

 テレビドラマは俳優、撮影、照明、録音、美術、メイク、衣裳、制作など、さまざまな要素を糸のように繋げて一つの作品に仕上げた総合芸術だが、『アンメット』はその糸が縫合糸のように強固だった。それはこのドラマに携わる一人ひとりが絶えず、みんなの今日を明日に繋げようとし続けてきた結果だろう。そんな本作を観たときに感じた強い感情はずっと心に残り続けるが、これからはいつでも取り出すことができる。

■リリース情報
『アンメット ある脳外科医の日記』
11月20日(水)Blu-ray&DVD BOX発売

Blu-ray BOX:31,900円(税込)
DVD BOX :25,850円(税込)

【収録話数】
全11話(ディレクターズカット版 ♯02、♯05、♯06、♯11)
【特典】
■映像特典(103分)
・メイキング集
・杉咲×若葉×岡山×千葉 座談会
・尾崎匠海のセットツアー&インタビュー
■封入特典
・オリジナルブックレット(32P)

出演:杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花、山谷花純、尾崎匠海(INI)、中村里帆、安井順平、野呂佳代、千葉雄大、阿南敦子、小市慢太郎、酒向芳、吉瀬美智子、井浦新
原作:子鹿ゆずる(原作)・大槻閑人(漫画)『アンメット-ある脳外科医の日記-』(講談社)
脚本:篠﨑絵里子
音楽:fox capture plan
主題歌:あいみょん「会いに行くのに」(unBORDE/Warner Music Japan)
オープニング曲:上野大樹「縫い目」(cutting edge)
演出:Yuki Saito、本橋圭太、日髙貴士
プロデューサー:米田孝、本郷達也
制作協力:MMJ
制作著作:カンテレ
発売元:カンテレ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©子鹿ゆずる・大槻閑人/講談社/カンテレ

関連記事